出版社内容情報
町田 康[マチダ コウ]
著・文・その他
内容説明
小角が書き送った短歌を自分の文章に無断で引用した作家・糺田両奴。国民の無意識に影響を及ぼして駄目にする奴の文学を根底から破壊する!こちらの世界に拉致してきた糺田に課した難題は、「一、短歌を作る。二、ラーメンと餃子の店を開店し人気店にする。三、暗殺」。それは魂のテロルの始まりだった。劣化する感性を粉砕する、破壊力抜群の傑作長編!
著者等紹介
町田康[マチダコウ]
作家・パンク歌手。1962年大阪府生まれ。高校時代からバンド活動を始め、’81年に伝説的なパンクバンド「INU」を結成、『メシ喰うな』でレコードデビュー。’92年に処女詩集『供花』刊行。’96年に発表した処女小説「くっすん大黒」で野間文芸新人賞、ドゥマゴ文学賞を受賞。2000年「きれぎれ」で芥川賞、’01年『土間の四十八滝』で萩原朔太郎賞、’02年「権現の踊り子」で川端康成文学賞、’05年『告白』で谷崎潤一郎賞、’08年『宿屋めぐり』で野間文芸賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ももっち
85
どんなにぶっ飛んでいて、シュールで意味不明であっても、激しく伝わるなんか分からん不条理さは、私の心を揺さぶる。他人の短歌を無断引用しとんでも解釈で作品とした愚劣で国民の無意識下に悪影響を及ぼすマイナー作家・糺田の文学を破壊するため、小角と未無が拉致監禁し無理難題。稚拙とか技巧とは無関係に迸る感性の無秩序を装い様々な叫びを内包した短歌や糺田のラーメン店に爆笑し、小角と未無の糺田への非道で愉快な仕打ちに少しだけ同情しつつ、天からの注がれる人間小唄に清々しく本を閉じる私は、やはり感じる文学ってラブだなとラブる。2017/11/02
抹茶モナカ
56
言葉遊びのような文章で、軽やかに読み進められるのだけど、町田康さん特有の毒っ気、破壊力で読むと疲れるところもある。表現というものについて、掘り下げて行っているのだろうなぁ。リズミカルに読者を運びながらも、破壊力のある小説で、フラフラにさせられる。パンク音楽は馴染みがないのだけど、パンクな小説だと思いました。2017/08/20
白椿
51
良い悪いではなく、好き嫌いで評価が分かれるのが町田康さんだと思います。独特のリズムと言語感覚がありますので、ツボに入ればクセになりますが、合わない方には徹底的に合わない作家さんですね。人間性に問題のある作家が、読者に監禁され理不尽な要求を突きつけられる…という作品ですが、支離滅裂一歩手前の物語ですので『物語らしい物語』を求める方は手を出さない方が良いかと。糺田両奴の作る短歌がまた微妙過ぎて、剛速球ですがストライクゾーンが極端に狭い感じです(笑)。個人的には末無さんがツボでした(笑)。2016/01/29
ふう
46
数ページ読んで他の本を手にとってしまいました。また数ページ読んで他の本へ。だめだ、ちゃんと向き合おうと思って読み進めました。難解に思えるテーマや展開ですが、俺によって語られる言葉が的を得ていて、「なるほど」とつい頷いてしまいました。町田氏の苦悩に満ちた言葉にふれながらも、読み終えて自分の考えをきちんとまとめることができず、助けを求めて解説へ。『彼にとって芸術的なうまい文章など死んだ形式でしかない』 『町田氏は文学、言葉、言葉を生んだ人々の生に対して謙虚でありたいのだ』。この小唄をちゃんと聴こうと思います。2014/02/26
さっとる◎
45
一匹の虫けらにとって都合のいい環境は、他の同じ種類の虫けらにとっても都合のいい環境になり得るか?イエスな気がする。一人の人間にとって都合のいい環境は、それ以外の人間にとっても都合のいい環境になり得るか?ノーな気がする。傲慢にならず謙虚に思い遣りをもって環境にもやさしく。そう思って生きることがなぜこんなに難しい。踏みにじられた魂は自分で取り戻せ。しかしこれ、何より短歌がすごい笑。「隈笹を刈りて滑落哀れなる不具になりたるダサダサの吾」「莫迦なひとは死んでいいよと正確に嘲る声がすっげぇあざやか」最高だ笑2017/09/09