内容説明
鬼に変貌していく老婆を捨てた息子と、その嫁の意外な末路とは…。「姥捨山」や、織女と牽牛の「天の川」といった、有名な昔話をベースにしながらも、独特の解釈で綴られた10の物語。大ベストセラー『大人のための残酷童話』の著者が、性欲や物欲、羞恥心といった、人間の奥底にひそむ感情を見事に描きだす。
著者等紹介
倉橋由美子[クラハシユミコ]
1935年高知県生まれ。明治大学大学院文学研究科中退。大学在学中の’60年「パルタイ」で明治大学学長賞を受賞。同作が芥川賞の候補となる。’61年短編集『パルタイ』で女流文学賞受賞。’62年には田村俊子賞を受賞。また、’87年『アマノン国往還記』で泉鏡花賞を受賞している。2005年6月10日、永眠。享年69(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
197
表題には「老人のための」とあるが、老人を読者対象にしているのではなく、老人たちが主人公の10の短篇からなる物語集。倉橋由美子の作品群の中では、彼女が一貫して追求し続けた小説とは別の系列の寓意的な物語に属するもの。したがって、いずれもプロットの展開は起伏に富んでいる。作者67歳の作品なので、ご自身の老境を自ら揶揄しているようなところも。10篇の配列もなかなかに巧みで、冒頭の「ある老人の図書館」で物語に導入し、末尾の「地獄めぐり」において、軽やかな皮肉と苦笑のうちに閉じる手管は実に鮮やかなものだ。2015/02/14
こばまり
47
作者が老境に入られてからの作品のせいかいずれのお話でも爺婆大暴走。個人的には『大人のための〜』の方が好みではありますが、これはこれで味わい深い。老人達が色んな欲を恥ずかしげもなく剥き出しにしている様が却って清々しいのでした。2015/05/19
メタボン
39
☆☆☆☆ 良くもまあこれだけの残酷話を書けるものだと、その発想力に感心。日本のおとぎ話は残酷なものが多いが、それをより大人向けに洗練させたようなおとぎ話集。堪能した。2022/01/24
tomi
31
倉橋由美子晩年の作品集。老いや死、あの世をテーマにブラックユーモアで皮肉の利いた作品が並ぶ。人々が本を読まなくなった世界で、図書館に籠って本を取り込んで生きる老人を幻想的に描く「ある老人の図書館」、グロテスクなホラー「姥捨山異聞」、老夫婦が参加した地獄めぐりツアーを軽いタッチで描いた「地獄めぐり」など多彩で面白い。2020/02/12
501
17
晩年の短編集。どの編も主人公は老人であり、死や死後の世界を意識した作品となっている。おそらくご自身の死を感じているなか書かれていと思われるが、どこか死を達観した姿勢が見られ、本作が死と関連の強い童話と銘打ったのは自然でしっくりとくる。2016/10/21