講談社選書メチエ<br> 危機の政治学―カール・シュミット入門

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講談社選書メチエ
危機の政治学―カール・シュミット入門

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  • サイズ B6判/ページ数 376p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062586733
  • NDC分類 311.234
  • Cコード C0331

出版社内容情報

稀代の思想家は今日、われわれに何を問いかけてくるのか? 第一人者が全主要著作を明快に解説する、有無を言わせぬ決定版概説書!朝鮮半島有事がリアルに予感されるようになった今、「非常事態」や「緊急事態」と呼ばれるものをどう考えればよいのか、という問いは切実さを増している。そのような状況の中で誰よりも有益な問いを示してくれるのが、本書の主人公カール・シュミット(1888-1985年)にほかならない。
シュミットほど物議を醸し、危険視されてきた思想家はいない。その著作を批判的に論じた者の名を挙げるだけでも、ベンヤミン、アレント、デリダ、ネグリ、ジジェク、アガンベンなど、枚挙に暇がない。憲法学(公法学)を専門とするドイツの法律家だったシュミットは、1914年に『国家の価値と個人の意義』で教授資格を取得し、ボン大学、ベルリン商科大学などで教鞭を執ったあと、ヒトラーが政権を掌握した1933年からベルリン大学教授に就任した。第一次世界大戦での敗戦以降、ドイツがワイマール共和制の崩壊に突き進んでいく中、シュミットは独自の思想を練り上げ、幾多の著作を発表する。その代表が『政治的ロマン主義』(1919年)、『独裁』(1921年)、『政治神学』(1922年)、『現代議会主義の精神史的状況』(1923年)などである。これらの著作でシュミットはワイマール体制に象徴される議会制民主主義や自由主義を批判し、ナチス政権の法学理論を支えた。それゆえ、戦後には不起訴になったものの、ニュルンベルク裁判で尋問を受けるなど、「ナチスの御用学者」として非難の的となる。
だが、政治の本質を「友と敵」の峻別に見る理論、のちにアガンベンによって注目される「例外状態」の理論など、シュミットが展開した思想は、今日なお大きな示唆を与えてくれる。本書は、唯一無二の特異な思想家カール・シュミットの生涯と思想を分かりやすく解説する。具体的な史実との関連の中で、戦後の『大地のノモス』(1950年)、『パルチザンの理論』(1963年)などの著作まで、全主要著作を読み解き、今日の世界情勢を考えるヒントを提供する。第一人者だからこそなしえた他に類を見ない決定版が、ここに誕生した。

序 非常事態と国家
第一章 政治神学とは何か
第二章 シュミットにおける教会と国家
第三章 ヴェルサイユ体制と国際連盟批判
第四章 ワイマール体制の危機とシュミット
第五章 ライヒの再建と広域圏構想
第六章 第二次世界大戦の敗戦とニュルンベルク裁判
第七章 内戦の終結とアムネスティ
第八章 戦後西ドイツ国家の成立とシュミット
第九章 新たな「大地のノモス」を求めて
第一〇章 パルチザンと新たな圏域秩序
第一一章 再び、政治神学とは何か
第一二章 神学的叛乱学とユダヤ人の問題
結 ドイツ、危機の根源
文献案内
文献一覧
あとがき
人名索引


牧野 雅彦[マキノ マサヒコ]
著・文・その他

内容説明

「非常事態」や「緊急事態」が現実のものとなったとき、われわれはどう対処すればよいのか?それが喫緊の問いになっている現代世界の中で誰よりも有益な思索を与えてくれる存在が、カール・シュミット(一八八八‐一九八五年)である。「ナチスの御用学者」として非難にさらされてきた異色の思想家は激動する世界で何を考えていたのか?定評ある著者が時代背景に照らしながら主要全著作を明快に解説する、有無を言わせぬ決定版!

目次

非常事態と国家―なぜカール・シュミットを読むのか
政治神学とは何か
シュミットにおける教会と国家
ヴェルサイユ体制と国際連盟批判
ワイマール体制の危機とシュミット
ライヒの再建と広域圏構想―ナチス期のシュミット
第二次世界大戦の敗戦とニュルンベルク裁判
内戦の終結とアムネスティ―真の講和を求めて
戦後西ドイツ国家の成立とシュミット
新たな「大地のノモス」を求めて
パルチザンと新たな圏域秩序―『パルチザンの理論』(一九六三年)
再び、政治神学とは何か
神学的叛乱学とユダヤ人の問題
ドイツ、危機の根源

著者等紹介

牧野雅彦[マキノマサヒコ]
1955年生まれ。京都大学法学部卒業、名古屋大学大学院法学研究科博士課程単位取得。名古屋大学法学部助手・教養部助教授などを経て、広島大学法学部教授。専門は、政治学、政治思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

うえぽん

39
政治思想史の専門家によるシュミットの入門書。ナチスに加担したことから危険な思想家と言われ、その全貌はほとんど理解されていないが、著者は有事が我が国に及ぶ可能性も見据えつつ、彼の議論は危機状態の国家における主権の在り方等に係る憲法の根本問題について洞察を与えると評価。ヴェルサイユ体制、ニュルンベルク裁判に対する厳しい論評に、一定の理解はするが、英米中心の戦後体制派とは相容れないだろう。英米の海洋国家に対抗する「大地のノモス」の追求も、Brexit以後のEUやロシアの海洋志向を見るに現在進行形の課題に思える。2024/03/09

またの名

9
「国家社会主義の基盤になってる法学者ですよ。どうやったら左派の味方になるんですか」とガブリエルが釘を刺すほど左派になぜか好まれるシュミットを、手堅く解説。シュミットに依拠する現代思想系の議論はほとんど触れずにメーストルやドノソ・コルテスといった著作中に頻出する論者、本人が明記しなかったが執筆時に影響を与えたに違いない時代状況とか法学神学の文脈をつなげる。キリスト教保守思想絡みの記述が充実して新しい印象を持てた反面、ニーチェやゲルマン神話に寄り掛かってアンチキリストを演じるナチスを支持した事実がより謎めく。2020/06/14

スプリント

8
ナチスの御用学者として非難されることが多いカール・シュミットを政治学の視点で論じています。2018/05/20

無重力蜜柑

6
シュミットとドメストルについての文章が読みたくなったので手に取った。が、微妙。面白くなりそうで、ならない。というより掴みどころがない。全体としては時系列順になっていて、シュミットの思想の展開を当時のドイツ政治や国際法の文脈で描くというもの。だが、文脈の部分がマニアックすぎて興味を惹かれないというのが正直なところ。ヨーロッパ公法史やドイツ政治史、キリスト教神学なんかは全く素人なので議論を追うだけで精一杯。政治神学やパルチザンの話などは面白いんだけれどな。なかなか苦しい読書だった。2024/10/10

郵便屋

5
入門とあるけど難しかったな。シュミットにとって、キリスト教の重要性とかは何となく理解できたけど、もう少し「友」と「敵」について平易に解説してあるものと期待していた。それでも、ナチスが政権を獲得するに至る中で、シュミットがそれに対抗するために独裁を必要としていたことなどは納得のものだった。いつか再読したい。2018/08/15

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