出版社内容情報
吉本隆明が最晩年に語った、最愛の猫・フランシス子の死。人は悲しみをどう受け止め乗り越えるか。自らの老いに重ね合わせ考察する。吉本隆明が最晩年(亡くなる3か月前)に、自らの老いに重ね合わせながら語った、最愛の猫・フランシス子の死。「戦後思想界の巨人」が、老、病、死、そしてその悲しみをどう受け止め、どう乗り越えたのかを、考察する一冊。吉本隆明の一周忌に寄せて刊行。
吉本 隆明[ヨシモト タカアキ]
著・文・その他
内容説明
とりたてて何もしない猫、しかし相思相愛の仲だった―。自らの死の三ヶ月前、吉本隆明が語った、忘れがたき最愛の猫フランシス子の死。
著者等紹介
吉本隆明[ヨシモトタカアキ]
1924年、東京・月島生まれ。詩人、文芸批評家、思想家。東京工業大学工学部電気化学科卒業後、工場に勤務しながら詩作や評論活動をつづける。日本の戦後思想に大きな影響をあたえ、文学や芸術だけでなく、政治、経済、国家、宗教、家族や大衆文化にいたるまで、人間社会のあらゆる事象を縦横無尽に論じ、「戦後思想界の巨人」と呼ばれた。2012年3月16日逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yamaneko*
65
愛猫フランシス子についての回想、は半分くらい。話は戦中世代が置かれた状況、宗教家・親鸞が浄土真宗を打ち立てた経緯へと果てしなく拡がっていく。こんなふうに思考することが常だった人には、ぴたりと自身の“うつし”のように寄り添う猫以外のペットは考えられないでしょう。2014/10/02
まさむ♪ね
53
人(猫?)づきあいが下手で消極的でこれといって特別なところが何もないごくごく普通の猫さんフランシス子。そんな一匹の平凡猫が亡くなったとき、この「戦後思想界の巨人」は心からの愛情を込めて「いい猫だった。僕にとっては本当にいい猫だった」と言う。そして、これは自分の「うつし」だとも。あるもの持てることを無闇にひけらかしたり、ないもの持たざることを必要以上に嘆き悲しんだりしない、自分がいまできることを日々積み重ねてたどり着いた一人と一匹の境地。猫の死も人の死も何ら違いはなくすべての死は平等にある、生きろ最後まで。2016/08/15
ぶんこ
52
著者初読みですが、ばななさんのエッセイを読んでいたので懐かしさを覚えました。装丁というか本の造りが詩集のようで、ページの空白の取り方、文字の少なさ、独白?と思える文体に不思議な世界。読み終えて「あとがきにかえて」を読むと聞き語りだった事、娘さんの「鍵の無い玄関」では話に事実誤認が現れていた事。不思議世界の背景が伝わってきました。それだけにフランシス子を、自分のうつしであると言われたお気持ちにジ〜ンときました。自分にとって愛しい猫は、賢かったり美猫だったりは関係無いですものね。親鸞、ホトトギスは難解。2016/05/18
ひめありす@灯れ松明の火
42
初めての吉本隆明さんは、残念ながら最後の肉声を纏めた物になってしまいました。まるで現代の内田百閒か夏目漱石かの様。だけど、飼い猫たちを猫さんと呼ぶふんわりと優しい言葉は童話を物語るように、お酒を少し召し上がっていい気分になってとりとめもなくふわふわ思った事を喋っている様に、聞えました。最後の愛猫フランシス子との日々、まどろむ様な記憶。ペタペタ押されたフランシス子の肉球判子も可愛らしい、追憶の為の一冊。猫の後ろ姿を追えば出会える偉大で、でも大らかな故人を偲ぶ言葉は、こんな風に穏やかでノスタルジックなのがいい2013/04/24
るんるん
29
亡くなった猫フランシス子について。まだ言葉にしていない感情を正確に察してそっくりそのまま返してくる、うつしそのもの、と。自分のほかに自分がいる、ってどんな感覚なんだろう。御自身と孫さん(ばななさんの子どもさん)の共通項になんだか親しみがわく。おもわず、くすっとなった。思考と行動のさかさまは、私のなかにもある。かわいがってくれる人の感情を察知するのは抜群なのに自分の感情を出すのはゆっくりめ、と猫を見つめる吉本さん。猫との相性、言葉を考え尽くそうとしてきた生きざまと深いところでつながっているのかもしれない。2016/06/14