内容説明
中世クロアチアの自治都市、ドゥブロブニク。ここには、自由の象徴として尊ばれ、救世主となった「リベルタス」と呼ばれる小さなブリキ人間がいた―。ボスニア・ヘルツェゴヴィナの一都市モスタルで、心臓以外の臓器をすべて他の事物に入れ替えられるという、酸鼻をきわめる殺人事件が起きた。殺されたのはセルビア人の民族主義グループの男たちだが、なぜか対立するモスリム人の男の遺体も一緒に残されていた。民族紛争による深い爪痕と、国境を越えて侵食するオンライン・ゲームによる仮想通貨のリアル・マネー・トレード。二つの闇が交錯するとき、複雑に絡み合う悲劇が起こる。同じく民族紛争を題材とした中編「クロアチア人の手」も同時収録した、大迫力の最新刊。
著者等紹介
島田荘司[シマダソウジ]
昭和23年広島県生まれ。武蔵野美術大学卒。昭和56年、『占星術殺人事件』でミステリ界に衝撃的なデビューを果たして以来、名探偵・御手洗潔、刑事・吉敷竹史のシリーズを中心に数々の傑作、意欲作を発表。また死刑問題や日本人論等、活動のフィールドを広げ、さらに多くの読者の共感・支持を集めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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勇波
57
島田荘司氏の良作に当たった時は体が熱くなる。本書に収録されている中編2作とも読み応えある内容になってます。動機の面でも歴史浪漫が満載です。せっかくの壮大な歴史背景がある犯罪であったからこそ、御手洗vs犯人の直接的な思想対決が見たかったな。片手間に解決されちゃあねぇ…。。御手洗さん面倒臭さがらずに探偵業務にも時間割いてね★2017/07/16
藤月はな(灯れ松明の火)
29
実家所蔵本。再読です。「リベルタスの寓話」では人の唱える自由は人をも殺し、憎しみを作り出すことを浮き彫りにした作品。再読すると寓話で尊敬と権威を象徴する神父がリベルタスに殺される場面は自由の意味を考えさせられました。「クロアチア人の手」は戦争によって生まれ落ちた者の何者にもなれない苦しみを吐露しつつも償いとして普通に接して来た相手から受ける憎悪(普通は裏切られた相手から普通に接せられたら心から憎らしいと思いますが)に怒る気持ちは人間のエゴイズムと本当はどこにもない自由を求める戦争の不毛さが描かれていました2011/12/26
ジャムうどん@アカウント移動してごはんになります
24
民族紛争について考えさせる話。描写もなかなかグロテスクで嫌な気持ちになるはなしでした。「クロアチア人の手」は、義手の使い方が凄かったです。いろいろ考えながら読みましたが、使い方はおろか義手だということすら気づきませんでした。ですが無理がある気もしました。ミステリとしてではなく、いろいろと考えさせられる話でした。2015/04/04
みこと
21
面白かった!電話の向こうの御手洗さんばかりで、動く姿が見られないのは残念だったけど、いつもながら見事な謎解きでした。旧ユーゴの民族紛争がテーマとなっていて、前に読んだ「戦場のタクト」を思い出しました。民族とは、命とは、と考えさせられますね。それにしてもあの寓話、本当にあるお話だとばかり思ってた!さすがです、島田先生(´Д` )2013/11/05
ちどり
16
「リベルタスの寓話」銀色のブリキでできた機械人形‘リベルタス’隣国が攻めてきた時、神父は神の声を聴いた リベルタスの中に人の内臓に似せた玩具を入れ 目の前にいる病死寸前の少年の心臓を入れれば少年はリベルタスとなり蘇りこの窮地を救う…そんな寓話を思い出す様な事件が起きた…仮想通貨の下りは自分には難しかったです…「クロアチア人の手」密室の中溺死し、右手と顔をピラニアに食べられ もぅ一人はトラックにぶつかった衝撃で何故かとトランクが爆発し爆死… 2014/12/22