内容説明
オスマンの国の都、イスタンブル。花を愛する都の人々が、競って咲かせようとしていたのは、幻といわれる花、青いチューリップだった。羊飼いの少年・ネフィは、アーデム教授とともに、本当に“青い”チューリップをつくりだそうとするが、チューリップをめぐる人々の運命は少しずつ変わりはじめる…。小学上級から。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
天の川
16
中近東のノンフィクションを書く作者の初の児童書。16世紀のオスマントルコが舞台の、交配でつくり出した青いチューリップ(ラーレ)の球根をめぐる物語。狂乱を呼ぶことになるであろうラーレの球根をスルタンに渡さなかったことで死刑になるかもしれない教授を救い出そうとする娘ラーレと少年ネフィの旅を描く冒険譚は、読み応えがありました。イスラム世界では具象画が禁じられ、絵師はアラベスク模様で表現しなければならなかったこと、イスラム世界の習俗、当時の政治情勢など、濃い内容がわかりやすく書かれており、非常に興味深かったです。2013/03/17
mntmt
15
16世紀、オスマントルコ。幻の青いチューリップが人を惑わす。展開が早く、ハラハラドキドキ、主人公たちから、目がはなせませんでした。ラストも少しゾクっとするほど、良かった。2015/12/08
杏子
15
オスマントルコを舞台にした、歴史冒険物。青いチューリップを巡る騒動を描いた。それ自体に毒や危険があるというわけではなくて、その存在があるがために欲にまみれて、他のことが目に入らなくなってしまう、人間の醜い姿そのものが「よからぬこと」なのだろう。ストーリーやキャラクターの造形よりも、歴史そのもの、現実にあった風物そのものに心が向き、感動させられた、という感じ。チューリップのことをラーレと呼び、幻の青いラーレを探す人々は現実にもあったろう。そう思うと、歴史ってすごいなぁ、ミステリーだなぁ!と思うわけ。2015/07/17
花林糖
13
16世紀のオスマントルコが舞台。スレイマン一世が欲している青いチューリップを巡る物語。設定や展開が面白く、ファンタジー色のない良質の児童書でした。当時のイスラム世界を丁寧に描かれていて興味深かった。セマばあさんのバクラヴァが食べたい。 2015/12/10
バニラ風味
6
ここでは青いチューリップが咲いている。「青いチューリップをスルタン(王)に献上すれば、きっとすごいご褒美がもらえるだろう」と言われ、カワとその息子ネフィは、その球根を持って都に行く。「ラーレ」と歌われる青いチューリップと、ラーレという名の少女をめぐる冒険物語は、イスラムの生活、美術、歴史を時には荒く、時には静かに、語る。青いチューリップは幸せを招く、と信じる者と、その本心は。実際、チューリップをめぐる熾烈な争いがオランダでもあったと聞く。美しいもののまわりに、争い事はつきものなのだろうか。2013/07/23