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内容説明
全戦線で日本軍の疲弊が目だちはじめたころ、ビルマでは牟田口第15軍指令官の怒号一喝、インパール作戦の火ぶたが切られた。しかし、思わぬ作戦齟齬の罠が待ちかまえていようとは!柳田第33師団長の作戦変更の要求、そして佐藤第31師団長の“抗命事件”。炎熱と飢餓のなかで戦う将兵の胸中は…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
姉勤
36
非対称戦であることの悲劇。いうまでもなく戦争自体悲劇ではあるが、さらにその悪業を際立たせのは、物量で勝る油断、窮鼠の如き状況、情報の精度、文化歴史に裏付けされた価値観の差。心理でも物理でも隔絶されたその差が日米英の戦死者の数を膨れ上げさせる。誰が愚将、誰が悪人と読前は属人的な責任追及で済む話だと思っていた。しかし、強制的因果律と思えるほどに、平時であれば美徳とさせるものが、戦時においては牙を剝く。責任感、義務感、気高さ、利他の志…インパール、サイパンその他の玉砕の島々。卑怯、無責任であれば生き残れた生命。2024/06/08
イプシロン
20
インパール作戦後半、サイパン陥落、東条内閣崩壊、台湾沖航空戦の過誤(いわゆる大本営発表)、切迫した土壌から萌芽した神風特攻と綴られてゆく。イ作戦中の師団長全員の罷免と抗命事件、マリアナ沖海戦の異様さとその後、どこをとってみても滅茶苦茶である。すでに軍が組織として機能しなくなっている様は凄まじい。マリアナ沖海戦の項で筆者は近接信管装備の対空砲弾について触れていないが、そのあたりを考慮に入れて読んでほしく思う。もはや兵器の進歩は精神力の敵でなくなったあとに神風という空恐ろし思念があったということを……。2015/10/05
タッキー
13
どんどん悲惨さが増してきます。サイパン島では、戦闘員かどうかにかかわらず、大勢が命を落とすことに。島の洞窟では、戦闘員が、非戦闘員の子供が泣くと、敵に見つかるから出て行けと言ったり。そして行き場がなくなり、仕方なく首を吊る人たち。一見、戦闘員を憎んだりしたくなりますが、みんな自分の生命を守るのに必死なので。そしてこの巻の最後は、神風特攻隊。自ら爆弾と化して、敵に体当たり攻撃をするこの攻撃方法。ここまでしないといけないのか、もう早く戦争なんてやめればいいのにと思いました。2023/03/19
ゲンゲン
3
インパール作戦でも装備・計画不十分な体制からの決死の突撃戦法。敵軍の圧倒的な装備と兵力を前に一歩も進めず退く以外にない。飢えと敵の攻撃に命を落としていく兵達。情報と補給手段の欠如がこれほどまでに悲惨な結果を生むことになるとを大本営の指導者達が留意しないことに佐藤中将でなくても憤る。一方で、サイパンや南洋の島々で純粋に国の為に命を捧げた純真無垢な隊員達には厚く敬意を表したい。 レイテ島の神風特別攻撃隊の決死の覚悟で戦いに挑む隊員たちの決意は涙が止まらなかった。2012/01/18
鈴木貴博
2
インパール作戦での様々な齟齬と作戦の失敗、マリアナ沖海戦、サイパン島玉砕、東條内閣退陣、フィリピンに迫る米軍、神風特別攻撃隊編制開始。2021/06/19