内容説明
徳川家康、秀忠の朝廷に対する姿勢は禁裏のもつ無形の力を衰弱させ、やがて無にしてしまうことだった。「禁中並公家諸法度」の制定や「紫衣事件」などの朝廷蔑視にあって、帝は幕府に反抗し、女帝に譲位し、自らは院政を敷くことにする…。波瀾万丈の生を歩まれる後水尾天皇を描く、未完の伝奇ロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
51
力による統治には限界があり、統治をどれほど強固に固めようとしてもいつかは綻びがでるということか。人は目の前の力に屈しても、内なる精神は決して屈することはないということなのだろう。もっと読んでいたかった。もっと、もっと、隆慶一郎氏の世界に遊んでいたかった。わかっていたことだが、連載途中での無念の絶筆。読者としてこれほどつらいことはない。しかし、『死ぬことと見つけたり』もそうであったが、たとえ未完成の作品であっても、この小説が輝きを失うことはない。私にとって忘れられない小説となった。2013/05/18
ちゃいろ子
36
読後、大満足している自分を感じたのは意外。最後まで読みたかったぁぁ!隆さーん!って叫ぶかなと思っていたが、中身が濃かったので満足できたし、幸せな時間だった。 きっとこれから更に盛り上がっていくのだろうなぁと思うと残念ではあるが。 殺してはいけないという厳命を守りながら闘い続けた岩介たちに拍手! ちょうど読んでいた大和和紀さんのイシュタルの娘でも 後水尾天皇が出てきて、この方や周囲の公卿たちについてもっと知りたいと強く感じた。2025/05/03
hrmt
35
えッ⁉︎これからってとこで終わり⁉︎と思ったら未完の絶筆だった…それを抜きにしても、面白かった。禁裏を支配下に置くだけでは飽き足らず、その皇統にまで徳川の血を侵入させようとする秀忠の執念。呪禁.結界など霊的要素と芸.文化の力。武力を持たずとも、民族としての文化の根幹部を抑えてるということが、どれほど大きな力となるか。エンタメ感満載でしたが、幕末に、力のないはずの朝廷の「敵」となることが、なぜそれほど不名誉と捉えられたのか…が、やっと腑におちた気がした。それにしても隆作品での秀忠が小者過ぎて笑ってしまうw2020/07/29
わたなべよしお
19
ただただ残念というしかない。分かっていたことだが、未完成なんだよなぁ。しかも、これから、一段と面白くなりそうな展開だったのに。分かっていたはずなのに、突然、終わってしまい、ショックを受けるのだ。 やっぱり、隆慶一郎は最高の作家の一人だなあ。久しぶりに読んで、そう感じた。2020/12/03
エヌ氏の部屋でノックの音が・・・
11
1993年 9月15日 初版。。。和子の入内の続きからである。策士家康が死んで秀忠(相変わらずの狡猾ぶり)の代となり、話は進んでいくのだが、途中で終ると分っていてもこの異能合戦が堪らなく面白い。結局は徳川方が勝つというか歴史に残っているので、帝側は負けたんだろうけど、隆先生はどう書くつもりだったのだろうか。2021/05/15