内容説明
締切りなのに書けない!編集者に言い訳、お詑びを書き始めた作家は、ついに小説の予定枚数分の弁明を書き上げてしまった…。笑えない題材こそ笑いの宝庫とばかりに、ありふれた身近な新聞の投書欄、旅行記、解説、新人賞応募原稿、ワープロ。当たるを幸い知的なパスティーシュに仕立て上げた傑作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんらんしゃ🎡
49
★こういう形態模写を書かせると清水氏は面白い。過去にも「序文」が傑作で著者独自のユーモアが冴える。★「コップの中の・・・」は新聞の投稿欄だけで構成される。わが子をちゃん付けで呼ぶ疑問から始まり、賛否両論、脱線勘違いに訓示垂れの投稿。それぞれに注釈つけたのが面白い。年代や生活環境も見え隠れし、ありそうに展開する。2017/01/12
unknown
8
締め切り間近だけど原稿が全然書けてないので、編集者への言い訳をつらつら書き連ねて規定枚数をクリアしちゃう表題作は、実に一発ネタ。文章要約が身に染み付いてしまったため、己の言動も百字以内で収まってしまう新聞記者の悲哀「百字の男」、擬音と会話文のみで構成された作品が投稿されて困惑する選考委員のぼやき「二十一世紀新小説応募作品」は、ケータイ小説やTwitterを経た今の時分に読み返すと妙な感慨が。問題提起への反論が繰り返されていくうちにズレた意見が出始め、挙句うやむやになる「コップの中の論戦」も秀逸。あるある。2012/07/12
け
5
学生時代に好きだった清水義範さんの短編集、20年ぶりの再読。表題作の「深夜の弁明」をはじめ、「百字の男」「コップの中の論戦」「三流コピーライター養成講座」がお気に入り。ただ、20年前に読んだ時ほどの感激みたいなものは感じられなかった。身近な題材を取り上げたパスティーシュ小説(模倣作品、ユーモアのあるパロディという意味らしい)という分野の特性上、取り上げられている題材が今読むとどうしても古く感じてしまうからかも。25年前の初版だから仕方ない。清水義範さんをよく読んでいた頃を懐かしく思い出しました。2017/04/30
hiroshi0083
4
パスティーシュ(作風模倣)小説の名手として知られる著者らしい作品が多数収録された短篇集である。著者をよく知る読者――僕自身も含む――はその種の作品目当てに手に取ったと思われるが、本書に関してはむしろミステリー仕立ての短篇「黄色い自転車」「岬の旅人」「浮かばれない男たち」「欠目戸街道を辿る」あたりがお気に入り作品となった。(コメントに続く)2023/06/24
かしまさ
4
ありそうでない未来世界の話がたくさん。テレビの音と自分たちの会話がシンクロする話が面白かった。ミステリー的なのもちょっと入ってる。1本が短めなので、隙間読みにもちょうど良いかも。自分は暇をもてあまして一気に読み切ってしまいましたが。2015/09/25