出版社内容情報
13の名画に隠された、驚きの謎、恐怖――秘密が明かされた時、あなたは戦慄する。『最後のトリック』深水黎一郎による傑作短編集。
内容説明
ドミニク・アングル「グランド・オダリスク」:パリ、ルーヴル美術館でスリに遭った主人公におこった不思議(「後宮寵姫」)。ハンス・バルドゥング・グリーン「女の三段階と死」:転校生の夏姫は、新しいクラスメイトから、よくある学校の怪談を聞くのだが(「旧校舎の踊り場」)。藤田嗣治「つばめと子供」:取材で訪れた見知らぬ土地で、公園で遊ぶ女の子たちと知り合った私だったが(「六人姉妹」)。架空の美術館(本書)に収蔵された、13の絵画と小説。
著者等紹介
深水黎一郎[フカミレイイチロウ]
1963年、山形県生まれ。慶應義塾大学文学研究科後期博士課程修了。2007年、『ウルチモ・トルッコ』でメフィスト賞を受賞しデビュー。同作は『最後のトリック』と改題文庫化され、ベストセラーとなる。11年、「人間の尊厳と八〇〇メートル」で日本推理作家協会賞(短編部門)受賞。15年刊行の『ミステリー・アリーナ』で16年「本格ミステリ・ベスト10」第1位に輝く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
88
声を出して笑ったのも、ミステリー調、不気味な話しもあり、どれも気軽に読めるけど、小説を読む前と後で絵の印象が変わるのが不思議。冒頭のアングル・グランド・オダリスクは軽いギャグだが、「ぼくのおじいさん」少年から見たシベリア帰りのおじいさんと香月泰男「北へ西へ」山口県立美術館、「六人姉妹」で最後に味わう不気味な後味と藤田嗣治「つばめと子供」ポーラ美術館、「葡流后の塔の上で」の500歳を超えた瑪麗との邂逅とニコライ・レイザー「マリー・ド・ブルゴーニュの肖像」ウイーン美術史美術館が印象に残る。13篇の絵画と小説。2021/09/18
コットン
87
13の絵画と短編小説で最初が旧漢字にカタカナ表記のルビ打ちが雰囲気あって装幀・装画と相まって良いかなと思ったが、それぞれ統一されていない文体でコミカルなものや、子供の書いたような形式など豊富なのは色々な絵画に合わせたからなのだろうか?意図は分からなくもないが、完成度から言うと文体の統一があったほうが良かったのではないかと思いました。最初面白い!と感じただけに残念です。2022/05/11
雪紫
55
絵は真実を表す。絵画を元に膨らませた掌編達に吹いたり、ゾッとしたり、ほんわかになったり題材が最後に明かされた時の反転に驚かされたり(蘇部さんの「動かぬ証拠」的な)。ルビばかりな話はどう見ても芸術探偵だろ!なことは承知だろう。なことはさておき、深水さんの多彩なイマジネーションが楽しめる作品(こいつ前の感想で深水さんのこと、超褒め言葉とはいえ頭の良い多彩な莫迦言ってたよな・・・)。個人的お気に入りは「旧校舎の踊り場」「女殺し屋と秘密諜報員」「六人姉妹」「父の再婚」「ぼくのおじいさん」。2021/12/15
花ママ
49
なかなか面白かった。13点の名画にちなんだ短編集。画集で見たことのある絵も含まれていたが、ほとんどが初めてのものでした。物語が絵画の特徴をうまくとらえていました。〈後宮寵姫〉〈ぼくのおじいさん〉がよかった。取り上げてあった絵画を、改めて美術全集で細部まで見てみたいと思いました。2021/09/26
雪月花
48
装丁と名画小説というタイトルに惹かれて手に取った本。統一性のない13の短編小説にちょっとずつどこかに登場する絵画は「グランド・オダリスク」以外はどれも知らないものだった。普通はカタカナで表記される言葉を無理やり漢字で当て字にしているものも多く、読みにくかったりしたが、ユーモア溢れるクスっと笑える短編あり、ホラーの短編ありで、楽しめた。個人的には『女殺し屋と秘密謀報員』と『父の再婚』が良かった。2023/09/15