内容説明
本書は、モラエスが終の栖と定めた徳島から祖国ポルトガルの新聞に連載した記事をまとめたもので、一市井人の眼で捉えた大正初期の日本人の生活と死生観が讃嘆をもって語られる。殊に死者を迎える祭り「盆」への憧憬は、孤愁の異邦人に愛しい死者との再会を夢想させる。吉井勇が「日本を恋ぬ悲しきまでに」と詠じたモラエスの「日本」が、現代の日本人の心奥に埋没した魂の響を呼び起こしてくれる。
目次
随筆文学について
徳島考
身辺雑記
死をめぐる日本の文化
死についての考察
徳島日記
ベント・カルケージャへの手紙
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MASA123
7
欧州で第一次世界大戦が起きていた大正時代初期、徳島で慎ましやかな生活を営んでいた元外交官のポルトガル人がいた。彼のもとに、祖国ポルトガルの新聞社から、日本の紹介記事投稿の依頼があり、それに応えて、徳島の風景や暮らしを、祖国の新聞に68回にわたり連載した。それが本書である。 タイムハンターが大正時代の徳島に潜入したかのようでおもしろいです。新聞連載記事なので「ぼんおどり」「げいしゃ」など外国人が興味をもちそうな話題も多く、軽妙な語り口ですが、仏教、死生観のようなところも考察されていて重みもあります。 2022/01/11
わ!
3
ヴェンセスラウ・デ・モラエスという人のことは、大半の人が知らないのではないだろうか?しかし、徳島市…特に駅から少し歩いた眉山の周辺を散策したことがある人は、このモラエスさんの史跡を幾つも見ることとなり。「誰だろう?」と気になるコトとなる。そのモラエスさんが祖国ポルトガルへ向けて、日本の暮らしを書いた随筆がこの本である。内容としては色々と書かれていてとても楽しい。タイトルの盆踊り…は、いわゆる「阿波踊り」のことなのだろうが、この随筆が書かれた1915年あたりには、阿波踊りという呼び名はなかったのだろうか?2024/02/17
hiroizm
2
日本について外国人が書いた本の中でいちばんの傑作かもしれない。秀逸の本2017/10/06
AR読書記録
2
外国人の眼を通して日本文化の諸相を見ると、新たな発見があるというか、見たことのない感じがして新鮮。神話とか。また「枕草子」(枕の覚えがき)、「妙法蓮華経」(よき掟の蓮の書)、「大正時代」(正義の時代)、「古事記」(回想録)のような著者の注意書きにも、はっとさせられる。そういえば全然意味を意識せずに覚え込んでいる言葉だなぁと。ちょうどお盆に読んだのはよかった。 2013/08/17
クリイロエビチャ
1
1900年前半に、徳島へ移り住んだポルトガル人の随筆。神戸での狭い人付き合いに疲れ、60歳を過ぎてから独り異国の田舎で隠棲する。西洋人と日本人の死生観の違いを、村で過ごす中で何度も噛みしめる著者。お盆や墓参り、仏壇の風習を賞賛し、死者を身近に感じ続ける日本人を賛美しながらも、自分は「死んだ人間の気配を感じたことは一度も無い」という。日本の中で異物であり決して同化できない、と達観するモラエスが書き表す「徳島」は、少しばかりノスタルジックではあるけれど、淡々としていて、20世紀初頭の生の日本を感じられる。2012/12/30