出版社内容情報
【内容紹介】
王朝貴族の間に広く愛唱された、白楽天、菅原道真の詩、紀貫之の和歌をはじめ東西の珠玉の歌謡集である。詩歌管絃に秀でた藤原公任の洗練された感覚で選びぬかれた俳句秀詩は、自然の美をあまねく歌い、男女の愛怨の情(こころ)を綴り、千年経た今日なお人々の心に共感をいざなう。詩を口ずさめば平安宮廷の美とともにシルクロードの遠いかすかなため息も聞えてくる。『平家物語』以下中世文学に多大な影響を与えた文芸史上権威ある作品でもある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅてふぁん
59
平安中期、藤原公任によって編まれた和歌と漢詩のアンソロジー。‘朗詠集’というだけあって、王朝人が日常的に好んで口遊んでいたであろう詩歌が八百余り集められている。中でも漢詩は一編全てが掲載されておらずワンフレーズだけという徹底ぶりで、そこにはこの時代の美意識が凝縮されている。また公任と同時代を生きた紫式部や清少納言の作品にも出てくる詩歌があり繋がりが見えて楽しい上に、実際にその部分が愛誦されていたということがわかるのが興味深い。今後通読することはないだろうけれど、折に触れて読み返していきたいと思う。2021/03/27
Major
46
平安文学の世界は豊穣だった。遣唐使が廃止され、国風文化が醸成されたこの平安時代中期。《朗詠》を愛でる思想文化のもとに、中国文学(漢詩・漢文)と日本文学(漢詩・和歌)の邂逅が、和綴の本に一つの文学的宇宙を形成した。漢の時代の文字の音を残しているのは、今この国で使っている漢字のみだという。しかし、こうした文学作品がこの時代に遺されていなければ、多くの漢字は現代に残されていなかったのではないか。四季の見出しごとに詩歌を並べた編纂に、人為的な営みを自然の恩恵に委ね、それを愛でるこの国の伝統文化と思想を観る。2025/01/28
tsu55
15
和歌は詞書を取り払い、漢詩は四句~十句で成り立っている詩の中の一句だけが採録されているだけなので、正直その詩句のどこが良いのか理解し難い。 けれど、知っている詩句が出てくると、ちょっと嬉しくなったりもする。 そういえば、源氏物語などの物語にもこうした詩句を貴公子が誦じる場面がよく出てくるけれど、様々なシチュエーションに相応しい詩句を覚えていなきゃならんというのは、ご苦労なことだなと思う。2025/02/27
なおこっか
5
公任というと「若紫やさぶらふ」発言の何か調子のってる人、という印象だったが、実は一流知識人なのだ。テーマごとに和漢縦横の詩歌を編集、しかも膨大。白楽天大好きなのはわかった。菅原道真は公任の時代には既に復権していたのだろうけれど、その間に書いたものが失せなかったのが何より。どちらかというと自由度が高く感じられる下巻、佳い。それから小倉百人一首のおかげで、自然に五七五七七のリズムに馴染んでいるのだと思った。“世の中をなににたとへむ朝ぼらけこぎゆく舟のあとの白波”沙弥満誓、佳い。2024/10/04
零水亭
4
漢詩パートは美しい一聯を抜き出したもので、本来なら詩全体の流れの中で味わうべきなのでしょうが、入門書と割り切れば不満はないと思います。寧ろ、美しい詩句から漢詩の世界に入るのは「あり」だと思います。和漢朗詠集を読んでから文選、白氏文集に進んでいった読者も多かったのでしょう(但し、この講談社学術文庫版で白文が付いていないのは、やはり不十分に思います)。意外と日本人の漢詩も多いのも注目したいところです。和歌パートでは、女流歌人で伊勢・中務母娘が気持ち多めだったような…
-
- 電子書籍
- カルテット~多重人格の夫と政略結婚しま…