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内容説明
天文学者の父親とともに遠く南国の孤島に暮らしている少女・海良。ある日、彼女が闇夜の草原で出会ったのは、星空から降りたった不思議な少年・τ(タウ)だった。「僕という天体は、宇宙を未来から過去へと進んでいる。でもこの姿を浮かべていられるのは、ほんの七日間だけ。だから今夜は僕にとって、君との最後の夜なんだよ―」去り際に残した、その謎めいた言葉通りに、海良は毎夜タウと出会い続ける。約束された出会いの、避けられない別れの時へ向かって―。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
82
この前読んだあちらは日常。こちらは宇宙スケール。さて読み終わって、いずれも捨てがたいものがあると思った。行き方の差異はあっても、優劣ではないと思うし、同一の仕掛けであっても、作品によって、こんなに感触が異なるのかと。作品から受けるニュアンスやクオリアは、実は表紙が的確に物語ってくれている。パラドックスをめぐる辻褄が、ラストでぴったり合っていて感動ものでした。2017/01/24
ちはや@灯れ松明の火
80
満天の星が夜明けに溶けるようにあなたは消えてゆく。遥かな約束だけを残して。一つめの夜、さよならから始まった出逢い、風にさざめく草原と心。好奇心から憧れへ、夜ごとふくらんでいく想い。昨日から明日へ、明日から昨日へ、ふたりの今がかさなる四つめの夜、地上を埋める人工の星空は眩くもかなしくて。深淵の闇を映した瞳、伝わり来る孤独と絶望。日ごといとしさもさびしさも募るのに、あなたはさかさまに遠ざかる。七つめの夜、遥かな約束を交わそう。輝きわたる夜空の星を結んだメビウスの輪に、永遠に終わらないふたりの七日間を託して。 2016/10/27
た〜
61
基本設定が「時尼(じにい)に関する覚え書」(梶尾真治 著「恐竜ラウレンティスの幻視」に収録されている短編)そっくりだな、物語としては全く別物だけれど。1991年発行の本だから入手困難だろうけれど、この本を読んで好印象を持った人にはぜひ一度読んでほしい2012/09/28
ゆかーん
51
『未来→過去』、『過去→未来』。同じ時間なのに逆さまの軌道を生きる二人。7日間という期限の中で二人の距離は縮まるのか、遠のくのか…。この二人の描写を見ていると二人はまるで『太陽と月』みたい。出会うことのない二人が出会ってしまったら、その後の世界はどの様に流れて行くのでしょう。すれ違うばかりだった月と太陽が交わった時、奇跡が生まれるのだとしたら、彼らが出会った瞬間に訪れる奇跡は、もはや運命としか言いようがありません。出会いと別れの無限ループの果てにあるものは、絶望なのか…希望なのか二人の恋に幸あれ!2015/09/25
エンリケ
49
少女と少年の純愛物語。ただし少年の正体は遥か未来からやって来た時間を逆行する元人間の小惑星。暗黒の宇宙を漂ううちに人としての意識が稀薄になっていたが、少女に呼ばれて地球に現れる。僅か七日間のしかも時間を逆行する逢瀬だが、二人はお互いの想いの永遠を信じて慈しみ合う。星空をバックに展開する悠久を感じるラブストーリー。天文学の蘊蓄も出てくるが、そんな知識が無くてもロマンチックなお話に浸れる。出来れば星の綺麗な場所で読みたかったが、是非も無い。昔習っていない暗黒物質の概念が新鮮。やはり天文学も日進月歩なんだね。2015/03/17