内容説明
古道具屋のおやじが言うことには…―「もの」の「はずみ」とは、世界をひろげていくための、たいせつな力でもあるのだ。パリの裏路地で出会ったものたちとの密やかな交流を綴った最新エッセイ。
目次
多情「物」心
白壁に映ったエジプト
一一〇ボルトの誘惑
うぐいす色の筒
一九時五九分の緊張
観覧車とペンギン
おまけ
いくさをしない動物たち
ランシャンタン
美しい木〔ほか〕
著者等紹介
堀江敏幸[ホリエトシユキ]
1964年岐阜県生まれ。作家。明治大学教授。95年『郊外へ』でデビュー。『おぱらばん』で三島由紀夫賞、『熊の敷石』で芥川賞、「スタンス・ドット」で川端康成文学賞、『雪沼とその周辺』で木山捷平文学賞、谷崎潤一郎賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
94
学生の頃に読んだフランシス・ポンジュの『物の味方』を想いだした。小説のように彫琢を凝らした文体ではないが、サラッとしていて、それでいてフランス風のエスプリを持った、ちょっと小粋なエッセイだ。「もの」は、あくまでも「物」であって、それ自体は生きてはいないのだが、ここでのそれらは何と生命感に溢れていることか。とりわけ2匹並んだ犬(本来は互いに無関係だったもの)のおもちゃのコンビの絶妙なこと。まさに「幼稚園の頃からの友だちみたいにたたずんで」いる。そして、ガラクタ市で売っている人たちとの掛け合いもまさにパリだ。2013/08/12
愛玉子
15
骨董というにはまだ若い、現役から少しだけ昔の懐かしいものたちを手に取り、ためつすがめつ眺め、いくばくかの代金を払って自分のものとする。そのささやかながら心躍る瞬間。穏やかな口調で語られる愛しきものたちへの想いは、柔らかい光に満たされた写真とともに、あたたかく心地良い。文章と同様に穏やかで落ち着いた紳士かと思いきや、ドアの取っ手に毎回袖を取られて慌てるあたり、やけに親近感が感じられるのも楽しい。眠る前にパラパラとめくって、開いたところを一話だけ読むのが好き。2010/04/06
橘
12
お気に入りのものについて書かれたエッセイ。著者が男性なのであまり寄り添うことが出来ず、サラッと読みました。原付き自転車はフランス映画でよく目にするのでかなり気になる存在です。2021/04/10
ジュースの素
11
フランスに留学した時にあちこちで出会った古物について書かれたショートエッセイ。妙な執着心がなく、淡々としているのがとてもいい。他人が見ればガラクタと言える物にもちゃんと物語がある。 実家が多治見で 私の郷里と近く余計に親しみが湧く。2017/08/20
ゴリ
9
堀江さんのお家がどうなっているのか心配です。南フランスで出会った物たちしか書かれていませんが、きっとあちこちで同じような出会いがあるのでしょう。今は使われなくなったものたちの心や使っていた人達の過去の独り言集。私にはそんなものたちの独り言は重すぎて聞いてあげられませんが、ページから香り立つものたちの心はなんとも豊かで暖かい。2012/06/20