出版社内容情報
剛の革命家と奇矯の帝。日本中世を切り拓いた二人の権力者の攻防にせまる。
悪人・清盛像を覆す画期的清盛論で知られる著者が、清盛の誕生から政権中枢への接近、政敵との角逐、遷都構想、死と平氏滅亡までを、清盛の協力者でありライバルであった後白河院との攻防を軸に、鮮やかに描きだす。
内容説明
帝王・後白河院と、保元・平治の乱を経てその最大の補佐役となった平清盛。しかし両者は、やがて激しく対立する。清盛暗殺の謀議・鹿ケ谷事件、治承三年政変と後白河幽閉。そして平氏政権の樹立―。後白河近臣の藤原信頼・成親と清盛の対立や、父・清盛と後白河の仲裁者であり、優れた軍事指揮官であった重盛の死など、清盛・後白河対立の看過されてきた背景を詳細に検証。武者の世へと至る平安末期の権力闘争を描きだす。
目次
第1章 初の接点 保元の乱
第2章 清盛の勝利 平治の乱
第3章 協調への道 後白河院政の成立
第4章 重盛と成親
第5章 権大納言惨殺 鹿ケ谷事件
第6章 後白河院政停止
終章 闘いの決着
著者等紹介
元木泰雄[モトキヤスオ]
1954年、兵庫県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程指導認定退学。中世前期政治史専攻。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科教授。京都大学博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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翔亀
36
【中世21】元木泰雄は徹頭徹尾、政治史なので好みではないのだが、そのディティールの"事実"の積み重ねは中毒性があり、4冊目になる。本書は保元の乱から平氏滅亡までの通史。時代は既読本と重なるが、平清盛と後白河院の視点へと照明の当て方を変えるだけで違う景色が見えてくる。同じ事件を取り上げているのに何故なんだろう。正確に既読本と比較はしなかったが、どうも一見、"事実"の積み重ねにみえて著者の推測がかなり含まれているようだ。その推測は、"事実"の裏付けを伴って流れるように書かれるので(まるで見てきたように)↓2022/04/08
Toska
17
平清盛の覇道に立ち塞がったのは後白河院だった。彼に比べれば頼朝などは小僧っ子にすぎない。時に協調し、時に激しくぶつかり合い、最後は平家の族滅で幕を閉じる二大巨人の濃密なドラマ。とは言え、後白河の政治的な資質は清盛の足元にも及ばなかったが、それ故に意表を衝く奇矯な行動で相手を振り回すことができた。周囲に期待されないことが彼のフリーダムな性格につながったのか。「英雄」ではなくとも歴史を動かす可能性がある、実に興味深い事例と言えそうだ。2024/11/28
skunk_c
11
初め『平清盛の闘い』から読み始めていたんだけど、こちらの方が読みやすく先に読了。平安末期を象徴するふたりの支配者の協調と確執に焦点を当てたもので、清盛のたぐいまれな政治感覚の鋭さがまず印象的。対する後白河は、やはり人格的にかなり癖があった様子だけど、こちらはちょっとくっきりとは見えてこなかった。まあ御上のことなので史料の扱いも難しそう。元木泰雄のこの時代についての著作は、史料評価が面白く、人物像もかなり明確。でもこうして読んでいくと、子どもの頃すり込まれた「平家物語史観」の根深さを痛感する。2015/06/27
浦
9
大河ドラマで平清盛に惹かれて、ドラマに近い捉え方とも言える著者の本を読み始め、もう4冊目。様々な文献から、一般的な悪役としてではない清盛と後白河院の争いを読み解く。学者なのに、結構読ませる文章を書いてくれるので、こんなに硬い内容でも読み進められる。ありがたい。2017/07/19
うしうし
5
平安時代末期、すなわち12世紀後半における平清盛と後白河院の政治的な関係を詳細に解説する。時勢により刻々と変化する政治情勢や複雑な人間関係を、的確に解説するのが元木泰雄氏の真骨頂である。本書は2012年(平成24年)刊行であるので、それまでに出版された著作の内容と重複する部分も多いと思われる。すでに当該テーマの権威となった元木氏ではあるが、その根幹となる学説がどの著作の段階で初出されているのかが、逆に興味がある。過去の著作も再読し、丁寧に読み込んでいきたい。2015/04/19