出版社内容情報
地獄に足を踏み入れたダンテが、師ウェルギリウスに導かれ地獄の谷から天国へ旅する壮大な叙事詩、第一部。ボッティチェリの素描収録。「これはダンテが遺した文字の時限爆弾だ」(島田雅彦/本書エッセイ)
内容説明
千三百年の春、復活祭の木曜日。闇黒の森に迷い込んだ詩人ダンテは、尊師ウェルギリウスに導かれ、生き身のまま地獄の門をくぐり九つの圏谷を降りてゆく。肉欲、欺瞞、異教、裏切り―地上での罪により呵責を受ける魂の叫び。ダンテは怖れ慄きながらも言葉を交わし、神が造りたもうた人間とは何か、その罪とは何かを探る。ボッティチェリの素描とともに読む西洋古典文学の神髄。第一部「地獄篇」。
著者等紹介
アリギエーリ,ダンテ[アリギエーリ,ダンテ] [Alighieri,Dante]
1265年フィレンツェに生まれる。9歳の時に出会ったベアトリーチェに恋し、その愛が彼の創作活動の源となった。公職についたのち政治活動に関わったが、当時フィレンツェで激化していた政争に敗れダンテはローマに一時滞留。そのまま汚職の罪で永久追放となり各地を放浪、二度と故郷には戻れなかった。文学史上屈指の傑作とされる『神曲』三部作は約13年をかけて執筆、完成直後の1321年、亡命先のラヴェンナで没す(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
LUNE MER
16
面白そうだからといった理由よりも、経験しておきたいという動機で読んだ一冊。上野の国立西洋美術館に行くと庭にロダンの「考える人」があり、そもそも「考える人」は「地獄の門」の上部にちょこんといるのを拡大してシングルカットしたものな訳で、この「地獄の門」はこの神曲に出てくるそれだということも昔から知ってはいる。そしてFFIVに登場するゴルベーザ四天王やカルコブリーナの名も本作に登場する鬼の名前が由来ということも知っている。そんなこんなでようやく今回本丸たる本書(ずっと本棚で埃かぶってた)を読めた✨2022/03/18
おりん
16
キリスト教の素養が無く、世界史や西洋史に詳しく無い人でも読める、初心者向きの本。当然僕もそういう人間の一人である。覚悟はしていたが読みにくかった。西洋史上の人物や、ダンテの知り合い、神話上の存在等がどっさり出てくる。本文の下にそれらの注釈が付いているため挫折せずに済んだが、注釈の配置がこうでなければ読めなかったかもしれない。あとがきも、本作への理解を深めるのに役立ってよかった。2017/03/12
まさむ♪ね
15
『神曲』に関する絵画(例えばロセッティ【ベアタ・ベアトリクス】とか・・・あとなんだっけ、忘れちゃった)はいくつか見たことがあったけど原作は読んだことがなかったので。まるでテーマパークの地獄めぐりアトラクションに乗っているような気分だった。案内役はウェルギリウス師匠で。収められたボッティチェリの素描も雰囲気を盛り上げる。地獄、怖い。果たしてダンテはベアトリーチェに会えるのか、いざ煉獄篇へ。2014/10/05
のれん
11
現代作品の地獄観に多大な影響を与える大作。 当時の著名人と共にギリシャ神話の英雄・偉人達が当然のように責め苦を受ける。 神学を知らずとも、時代を超えて平等に罪を裁かれ、適した地獄へ行く構図は仏教やイスラム教にも通じ、人間の因果応報を願う欲が可視化されている。 なにより尊敬する詩人を師にして、勝手に神格化した女性を愛の天使にし、自分を追放した派閥を地獄へ堕とす、その素晴らしい文学精神に惚れ惚れする。 各時代における評価の変遷こそが、今作の卑屈さと正直さを現している。 解説や粗筋も丁寧で読みやすいのも良い点。2021/10/08
Francis
11
神曲は壽岳訳を最初に読んだら意外と面白くて次に名訳と言われる平川訳を読み、これで三種類の訳を読んだことになる。これも訳注が豊富で文章もわかりやすく、面白い。ダンテの「神曲」は日本ではいかめしくてとっつきにくいイメージがあるが実は喜劇であり、面白い読み物なのである。私の読んだ三つの訳はいずれもわかりやすく面白いのでいずれかを読んでこの物語の面白さを味わってほしい。ダンテはこの地獄篇で教皇ボニファティウス8世に対して容赦ない批判をするなど、中世人と言うよりもむしろ近代人としての片鱗をすでに表している。2016/04/22