内容説明
桜の花が咲くころ、新聞記者を休職中のぼくは一つ年上の女とある酒場で再会し、一夜をともにする。そして、数ヵ月後、酒場に再びぼくが訪れた時に聞いた噂は、二十八歳の彼女は妊娠しているというものだった。しかも彼女は行方不明。父親はぼくなのか?ならばなぜ彼女は妊娠していることをぼくに知らせないのか?教授、魅力的な夫人、十七歳の少女、風変わりな探偵。悲しみも夢も希望もある人々とめぐり会いながら、彼は彼女の行方を追う―。
著者等紹介
佐藤正午[サトウショウゴ]
1955年長崎県佐世保市生まれ。北海道大学文学部中退。83年、『永遠の1/2』ですばる文学賞を受賞。『ジャンプ』(光文社)が2000年のベストセラーとなり、恋愛小説の書き手としての評価が一層高まった。佐世保市在住
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
82
★★☆☆☆22031【個人教授 (佐藤 正午さん)k】◯プリンを食べるのに、開いた唇をプリンの頂点に覆いかぶせて丸ごと一気に呑み込んでしまう(そんなの見たことない〜)◯鶏の内臓の刺身ってなに?(レバ刺しか?)◯「ああいう人間はこの街には必要ないの。頭が切れる人間はいつかはじきだされるわ」(当方やべぇ!)◯小説の中の探偵は決して依頼が重ならない。彼らは一つの事件に集中してあたることができる。(たしかに!)◯初恋とは、少年時代に経験する恋ではなく、大人が少年だった頃に経験した恋のことである(マジかっ!)2022/04/04
巨峰
66
この人の初期作品に通う空気のようなものを感じた。若くてやや過剰な自意識のようなもの。こんな寄る辺のなさげな男だから、かえってモテるんだろうな。まぁ端からみたら最低なんだろうけど、女たちは彼に対して怒ってはいても、けっして嫌いにはなっていない。彼は古い観念に囚われているけど、作家はすでにそれを乗り越えて新しいところに立っている気がする。そして、人は生きていくためには誰かを教授にしないといけない。たとえそれが酒場であっても。2017/11/09
かんちゃん
24
【図書館】不可解なものが多すぎる。なかでも女ほどわからないものはない。本作の主人公はなぜモテるのか?(そこかよ!)拠り所を求めて男にすがるくせに、別れる前にはちゃんと次の道筋(次の男とか)を用意している(なんか悔しい)。世間に疲れ、酒と女に逃れ、一年を無為に過ごす男。誰にも指図されず自由に生きる「教授」の生き様に憧れ、救いを求めるのは男の弱さゆえか。なんともやるせなさが残る。男とはこうまでも弱い生きものなのか。フラれ続けた我が人生。あ〜無情。2016/08/18
こすも
17
佐藤正午さんの小説に出会ってから3年。この作品でちょうど30作目の読了となりました。佐藤正午さんのキャリアを前期、『彼女について知ることのすべて』からの中期、『ダンスホール』からの後期と便宜的に分けると、本作品は前期の最後の方、長編小説の7作目となります。海外ハードボイルドのような小粋な会話と、後の『ジャンプ』に通じる寂寥感が本作品の魅力かな。あ、僕が読了した作品の中で、この主人公が女にだらしのなさNo.1でした(笑) また、初期作品とはいえ安定して文章はクオリティが高く、単語一つまで磨かれています。2017/09/10
ヲム
13
佐藤正午先生はダメ男を書かせたら右に出る者はいないと思います! 今回の主人公も中々のダメ男でした…(笑)2019/06/08