内容説明
小さな島の版画館で警備員として働く風見国彦は、毎日決まった時間に訪れるセーラー服の美少女に気づく。彼女の目的は、アントニスゾーンの版画『バベルの塔の崩壊』。閉館までその作品の前に立ちつくしている少女に、風見は興味を抱く。同じ頃、島では連続殺人事件が発生。殺人現場には必ず「バベルの塔」の絵が残されていた。殺人事件の犯人は誰か、バベルに秘められたメッセージは何か、そして美少女と事件の関係は?自作の絵画と小説を融合させるという全く新しい試みで注目を集める作家の、ミステリ・マインドに溢れる一作。
著者等紹介
飛鳥部勝則[アスカベカツノリ]
1964年新潟県に生まれる。新潟大学大学院教育学研究科を修了。1998年、『殉教カテリナ車輪』で第九回鮎川哲也賞を受賞し、作家デビュー。自作の油絵を付し、美術の知識を援用した独自の本格世界を築く
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
246
安定の世界観だが、あくまで個人的な好みでいえば他作品より一段落ちてしまう。ミステリとして"読者に対しての仕掛けはあるが作中人物からすると特に不可解は無い"タイプのものである。事件自体が地味なのだ。終盤に人物の会話で「ココでこういうヒントを出してましたよ」と、おさらいの羅列があるが、地味ゆえに言葉を重ねるほどキツイと感じる部分もある。物語内に登場する教職者たちの職業意識の荒み方は実体験が反映されているのだろうか。よくぞここまでぶちまけたなと読んでてヒヤヒヤする。ダイイングメッセージの扱い方は流石の品質。2016/11/05
nobby
86
連続殺人現場に残される「バベル」の意味と1人の孤独な大人びた少女の存在を中心に展開する。聖書に疎い自分にとって中盤まではバベルの塔についての解説多く少々苦戦…それでも後半述べられる推理に違和感持ちながらも耳傾けてしまう。そしてやっぱりただでは終わらぬ最終章!明かされる事実に苦笑いしてしまうが、きちんと説明されてしまうと納得するしかない(笑)志乃の描写が不思議そのままだったり美少女感少なくあまり魅力感じられないのが残念…2016/07/10
神太郎
35
復刊本にて。今回はバベルの塔をモチーフにした推理小説。どこに着地するのかわからない序盤。病的なまでにバベルに侵食されていく中盤。推理パートの終盤にネタバラシのラストと構成は上手いなぁと思いつつ、ネタバラシ聞くとそれを聞いてるキャラ同様に「え、そこは…まぁ。たしかにぃー」とはなり、満足できるかは人それぞれ。「もしコレが推理小説の中だとしたら〜」とか軽いメタ発言とも取れる部分も好き好き分かれそう。内容が濃い目なのにサラッと終わる感じがなんとも不思議。2024/08/14
ミーホ
33
まんまと騙されて、伏線回収のためダイジェスト再読してたら普通に読み始めちゃった・・・なんだろこのクセになる感じ。要となる陶芸教室にまだ辿り着かない段階なのに、結末を知って読んでみると「あぁ」となる箇所がポロポロと出てくる。飛鳥部作品だ、というのが伏線を隠すフィルターとなってるのでは!?とひねくれた考えをしてしまう。魅力的な登場人物いないし、作中では美術教師が描いたとされる著者の画もジモンちゃんにしか見えないけど、モチーフとなるバベルの塔に絡めた罠がお見事。大津版画館展示の《バベルの塔の崩壊》が好き。2017/02/12
Ayah Book
25
ジャンルは本格ミステリかなぁ?美術蘊蓄など楽しく読めました。相変わらず美少女へのこだわりがすごく、ファムファタール的な美少女キャラの魅力は十分すぎるほど伝わってきた。しかし、読み手の私が年を取ったからか、彼女を取り巻く男キャラがちょっと気持ち悪かったですね。ロリコン。。。暴力教師とか、かなり引いてしまった。ミステリ部分はバカミスっぽかった。でも嫌いではないです。2023/01/10
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