内容説明
詩人・大岡信による名句・名歌アンソロジー。秋の気配は、一筋の風が吹き抜けることから始まる。目に見えない風が、目に見えない秋を運んでやって来る。立秋とは秋風を感知すべき日のこと。「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる」という『古今集』秋歌の部の巻頭歌は、そうした常識を作った点で偉大な一首である。本巻では、古今の〔秋〕の秀作を精選、詩情あふれる解説で綴る。秋のエッセイ五編と「子規が立派だと思うこと」を併載。
目次
秋風
月
紅葉
七夕
虫の音
子規が立派だと思うこと
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
双海(ふたみ)
10
「たちまちに君の姿を霧とざし 或る楽章をわれは思ひき」(近藤芳美)久々に芳美の歌を。よいものはやはりよい。・「曼珠沙華抱くほどとれど母恋し」(中村汀女)汀女のような人格円満なる俳人を愛す。2020/03/07
mm
6
移動が多い時は、この本の様に、どこから読んでも、どこでやめても大丈夫なやつが重宝します。旅空で、読友さまに思いを馳せれば、「人それぞれ書を読んでいる良夜かな」山口青邨2014/10/01
ダイキ
5
大岡さんの『名句 歌ごよみ』シリーズを季節の移り目ごとに開いては、日本の詩歌を味わい得る幸いを沁み沁みと噛み締めています。私自身はこの秋こそが四季の一等という思いが強いのですが、近ごろ『更級日記』を再読していると、話題が春秋の優劣ということに及んだ際、源資通という人の言葉として記されている、「わが心のなびき、そのをりのあはれとも、をかしとも思ふことのある時、やがてそのをりの空のけしきも、月も花も心に染めらるゝにこそあべかめれ。」という一節に目が留まり、これぞみやび男と、あわれ深く潜思したものでした。2019/10/01
アンコ椿
0
秋は月がいい。2012/11/02
misui
0
「船の名の月に読まるゝ港かな」(日野草城)、「鮎落ちて美しき世は終わりけり」(殿村菟絲子)、「或る闇は蟲の形をして哭けり」(河原枇杷男)2020/08/19