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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
121
暴動に失敗し国事犯となった著者が獄中で口述した自伝。加速するマルク下落、苛酷なヴェルサイユ条約への不満、連合国への反感など混乱した社会経済に乗じて彼は民衆を国家主義的団結へと巧みに扇動して軍国主義を復活させた。反マルクシズムや反議会制民主主義は次第にアーリア人種至上主義/反ユダヤ主義へ突飛な飛躍をする。「この世界では、よい人種でないものはクズである」—面倒でも注釈を読むことをおすすめする。困窮した民心とはここまで粉飾塗れの過激論に易々と掌握されスケープゴートに加担する。それは今の世も大して変わらなさそう。2024/11/08
マエダ
101
第六章の戦時宣伝は必読でありここがヒトラーの旨みである。宣伝の目的とは何か宣伝は誰に向けるべきか、と非常に学ぶべきものが多い。学識あるインテリゲンツィアに対してか、あるいは教養の低い大衆に対してか、”宣伝は永久にただ大衆にのみ向けるべきである”思っていてもここまで言い切るとは面白い。宣伝に対する拘りは非常に見ものである。2016/04/18
Miyoshi Hirotaka
48
1920年代のメディアの主力は新聞。ところが、国の運命を国際連盟に委ねるべきと世論誘導し、道徳や風紀を時代遅れなものとし、ドイツ民族と帝国の墓堀人の役割をした。新聞の読者は、読んだものをすべて信じてしまう人々が圧倒的多数で、読んだものを批判的に吟味し、判定する頭脳を持つ人々は極めて稀。ヒトラーは演説という徒手空拳に近い手段で大衆を切り崩し、多くの聴衆と支持者を集めるまでに成長した。新聞社はユダヤ系。新聞批判は反ユダヤと密接に関係した。国を貶める報道をした「反独マスコミ」も迫害の原因と無関係ではなかった。2016/09/05
Willie the Wildcat
48
過渡な民族・文化への誇りも、土壌に政治の腐敗や経済の疲弊。普仏戦争、第一次大戦を通した心の鬱積が、次第に反ユダヤに傾倒する件が印象的。但し、論旨が感情的であり、論理性に欠ける気がする。一方、当時の政治・経済状況への市民の不満に、その感情的な訴えが一致したのも事実。時勢と自分の立ち位置を踏まえた戦略が、ヒトラーの政治家としての才かもしれない。無論、大衆を無能としている点が、ヒトラーの本質。青少年時代の不遇、”出会い”の巡りあわせの不幸が屈折した方向に突き進んだ要因なのか。2015/01/20
紫陽花
43
ドイツのヒトラーの作品。図書館で偶然見かけ、有名な本なので読むことにしました。内容は難しく、賛同できない部分もありますが、大衆運動のこと、議会のことなど、新聞のこと…。今にも通ずる部分もたくさんありました。凄い筆力です。色んなことを考え、そして実行してきたんですね。それに比べると私自身は何も考えないで毎日生きています。若干反省させられました。2022/07/30