内容説明
崖の下に伸ばした母親の腕に女の子がぶら下がっている。辺りには人影もなく、かよわい女の力では引っ張り上げることができない。母親の腕の力が尽きかけたその時、山伏が現れて、子供を救い上げた。大鷲坊と名のるこの山伏は、白装束に高下駄、髭面の大男。羽黒山からこの村の薬師神社の別当に任ぜられてきたのだが、神社には長年住み着いている偽山伏がいて、村人たちの信望を集めていた…。山伏と村人たちとの交流を通して、著者が愛してやまない郷里山形県荘内の人々の往時の暮らしを、郷愁をこめて書き綴った時代長編。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
1927年山形県生まれ。1971年『溟い海』でオール読物新人賞受賞。1973年『暗殺の年輪』で直木賞受賞。1986年『白き瓶』で吉川英治文学賞受賞。1997年没
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。