内容説明
好寄に満ちた視線が行き交うトップレス・バーで、真知子はただ一人の男を思い、踊る。カズさんとの交情は、潔らかで高貴だった。得体の知れない熱い血が突き上げる―。恋に落ちた二人はヴァレンタインの夜、警察の手入れで逃げ出し、カズの故郷へと向かった。夫婦となり、新生活が始まるが、閉塞感と運命は、二人を否応なしに試練へと導いてゆく。惹かれ合う男と女の本能を、異才・中上健次が描き尽くした究極の性愛の物語。
著者等紹介
中上健次[ナカガミケンジ]
1946年和歌山県新宮市生まれ。作家・批評家・詩人。『灰色のコカコーラ』でデビュー。73年、『十九歳の地図』が第69回芥川賞候補となる。76年『岬』で第74回芥川賞を受賞。ウィリアム・フォークナーに影響を受け、土俗的な手法で紀州熊野を舞台に「紀州サーガ」とよばれる小説群を執筆。92年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
88
中上健次の凄さを見せつけられました。ストリップ・バーで愛するただ一人の男のために踊る真知子。カズさんとの愛の逃避行の末の結婚、そして別れ。濃密な官能とエロスの匂い立つ恋愛が五感に突き刺さってきます。生々しくてドロドロしていて美しさなどないのに、ヒリヒリする純愛を感じずにはいられませんでした。惹かれ合う2人の本能を剥き出しにした愛は究極の性愛だと思います。決して万人受けする話ではないけれど、体が痺れていくのを止めることはできませんでした。力のある作家だと聞いてはいましたが、ここまで凄いことに驚きです。 2015/12/01
TAKA
54
女性目線で語られていくんだがなんか煮えきらん女だなあ。五分と五分の相思相愛と言われても。都会でストリッパーとして生活しているやさぐれ者は田舎に住むと注目の的になり、ましてや資産家で悪童として名高い男と駆け落ち同然となりゃそりゃ話題性は抜群だわ。都会と比べて田舎ほど閉塞感があり生き辛いのがよくわかるが、やってることは意味不明。やはりこの女性は真からの妖艶な悪女だと思う。過去に縛られている人達が多すぎて重かった。2023/05/04
Mayumi Hoshino
27
何度となく繰り返される、「相思相愛、男と女、五分と五分の仲」というフレーズ。私も付き合う相手とはイーブンでありたいと思っているから、真知子のこの切なる願いに共感するとともに、愛した人の故郷で「あの名家に嫁いだ、破廉恥な女」だと常に注目されて暮らすのは、さぞかし息苦しかったと想像する(この閉塞感、何となく「ここは退屈迎えにきて」に通ずるものが)。生まれてくる時代と暮らす場所が間違っていたんだと結論付けるのは簡単だけど、じゃあ惚れた相手も間違えてたの?と問われたら何も言えなくなる。恋愛、むずかしい。2015/10/21
東京湾
21
「五分と五分の、相思相愛の二人に、どう破滅しようと、逃げ出す道はない」 トップレス・バ―の踊り子・真知子とチンピラのカズ、二人の刹那的で悲劇的な愛の物語。はっきり言ってしまうと真知子の言動には全くと言っていいほど共感できなかったが、それとは関係なしに物語に引き込まれた。中上健次を読むのはこれが初めてだが、著者の筆力をひしひしと感じさせられる。特筆すべきは肉体の描写。女性の艶美な稜線や男性のゴツゴツとした体躯、それらが実に巧く描かれているなと思った。「枯木灘」など他の中上作品もいずれ読んでみたい。2017/02/28
kiki
8
古い作品だが、そんなにも古くさくは感じませんでした。青臭い恋愛小説って感じでしょうか。若いって素晴らしい。映画もまあ良かったが、また別の役者さんと監督さんでも観てみたい。2022/02/28