出版社内容情報
三浦 綾子[ミウラ アヤコ]
著・文・その他
内容説明
「どうしたらよいか迷った時は、自分の損になる方を選ぶといい」小学校の担任坂部の信念と優しさに強い影響を受けた北森竜太は、タコ部屋の朝鮮人労働者を匿う温かい家庭で成長し、昭和12年に教師になった。炭鉱町の小学校で「綴り方」の授業を推進するなど教育の理想を目指す竜太のもとに、言論統制の暗い影が忍びよる―。戦争に突入する昭和10年代の事件と世相を背景に、青年教師の愛と苦悩を描いた感動大作。
著者等紹介
三浦綾子[ミウラアヤコ]
1922年、北海道旭川市生まれ。旭川市立高女卒。59年、三浦光世と結婚。64年、朝日新聞社の懸賞小説に『氷点』が入選、国民的ベストセラーとなる。人間の愛、原罪、祈りなどをテーマに、『塩狩峠』『海嶺』『銃口』『母』など多数の著書を遺した。99年、77歳で逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
京都と医療と人権の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あつひめ
99
今の時期に読むのはよいかも。新聞で紹介されていた。今の日本の政治、誰のための法律。三浦さんの描く世界はいつも弱いものを守る紳士的な人が出てきて導いてくれる。北海道在住だからなのか…時代がちがっても土地の距離感は変わらないからあの頃を気候も含めて想像できる。言いたいことが言えないってどんな風になるんだろう。誰が味方かもわからなくなりそうな時代を先祖は過ごしてきたんだな。私たちがしっかり見据えないと日本はどこかに行ってしまいそう…と、上巻だけでも感じた。早速、下巻にいきます。2013/12/17
優希
80
昭和初期を背景に、青年教師の愛と苦悩を描いているせいか、グイグイのめり込みました。小学校時代の恩師の信念と優しさに影響され、教師となった竜太ですが、言語統制の厳しい現実にさらされます。言論の自由がない時代は、子供たちに自由に作文を書かせるだけで危険思想になるというのが辛く感じました。その結果逮捕までされるのですから、恐ろしい時代に見えました。逮捕された竜太の運命はどうなるのか気になります。芳子への想いの行く末もどうなるのでしょう。言語統制の治安維持国家の厳しさを見たようでした。2015/10/17
Taka
56
大正期から戦争前夜、質屋の倅が成長する過程の話。上巻は尊敬できる恩師に憧れて教師を目指し、実現するところまで。この先どうなるのか全く読めないが、すぐにでも続きが読みたい。下巻の調達方法を考えねば。。2018/11/15
さぜん
55
教育学の先生のおすすめ本。昭和初期の「綴り方教育」の実情や、ひたひたと迫りくる戦争による言論統制。小学校の担任教師から影響を受け教師となった竜太。実家は質屋で「貧乏人のおかげで商売ができる」との批判に父は「人間金があるからと威張ってはならん」と質屋は人を救うことができる商売だと胸を張る。当時の世相や生活の描写が実にリアル。この時代でも国語力こそが重要と捉えているにも関わらず、大人も子供も口を閉ざし、自由に意見を言えなくなっていく。突然警察に連行される竜太はどうなる。下巻は辛い読書になりそうだ。2022/11/27
おさむ
51
佐藤優氏が推薦する三浦綾子の名作。「どうしたらよいか迷ったときは、自分の損になるほうを選ぶといい」キリスト教の思想が全編を貫いています。大正から昭和にかけて戦争が色濃くなる日本社会を北海道の教育現場から映し出す。綴り方教育等は「やまびこ教室」をも彷彿させます。見事な筆さばきで読ませます。2016/06/13