出版社内容情報
フリマアプリで購入した一台の中古のボイスレコーダー。
そこには、九州の■■■大学での夜間自主警備、通称「夜警」を行う学生たちによって語られたと思われる、たくさんの怪談音声データが残されていた。
本書はそれらのデータと、ボイスレコーダーにまつわる一連の出来事をまとめた記録である。
この本が無事出版されることを祈ります。
内容説明
決してあの子を呼ばないでください。数多の怪談が吹き込まれたボイスレコーダーに紛れ込むのは怪異か、それとも―
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
眠る山猫屋
65
前提を、物語を、全てを疑え。ボイスレコーダーに残された数十もの怪談。それは、かつて九州のある大学に存在した学生たちによるサークル棟の“夜警”という自治システムでの企画の副産物だ。夜警を担う学生たちが様々な怪談を録音し、奇怪な画像データを残していた。そして派生していく怪異を取材していく破目になる作家・・・。歪な怪談の集積の果てに待つのは、夜警発足の切っ掛けになった事件の真相なのか、それとも。単純に、怖いよ面白いよとは薦められないが、モキュメンタリーというホラージャンルに牽かれる者なら、読む価値のある一冊。2025/04/24
のりすけ
38
モキュホラ。「フェイクモキュメンタリーQ」みたいな感じだけど、ちょっと及ばず。個々には面白い話もあるしぞっとする話もあるのだが、誰が話し手なのかがわかりにくく損をしている気がする。画像は荒くてよくわからぬ、老眼だし。ラストの持って行き方は、そりゃないぜセニョール…だった。前半のゾゾゾ、後半のトホホ。少しばかりもったいない。タイトルには「そうなんや」と納得できたので、まぁいいか。2025/08/16
キナコ
29
表紙買いした一冊。モキュメンタリーもの。一つ一つの話がそこまで印象には残らないが、徐々に違和感として表れてくる作品。人って分からない部分を勝手に補おうとする能力があるとは聞くが、怪異はその空白に入り込むというのは納得。フリマで購入したボイスレコーダーをもとにした怪談という設定も実際にありそうで良かった。2025/02/16
佐倉
22
著者が手に入れたボイスレコーダー、その中に収録されていた多数の怪談やテキスト。そこにはある大学の自治団体が怪談イベント用に準備した怪談と、そのイベントで起きた怪異を追う作家の足跡が平行して残されており…というモキュメンタリー。ひとつひとつの怪談が面白く、それをレコーダー越しに夜の校舎で聞くというシチュエーションも趣がある。怪談単位では御蔵入りしたネット番組でアイドルが語った『指女』ケーキ屋の宣伝パネルへのいたずら『副作用』不気味な結婚式のビデオ編集『エイプリル』ある言葉が奪われる『つゆしらず』が印象的。2025/06/11
みや
17
ミステリ作家が中古のボイスレコーダーに残る怪談を考察する。怪談語り、それを聞く作家、著者の補足の3つが何層もの作中作となって描かれるので少々ややこしかった。かなりの数の怪談が語られ、その一つ一つが斬新で面白く、それだけで満足度が充分に高い。写真や小説といった形式を挟み、話し手が複数いるため内容も雰囲気も様々な味わいを楽しめる。だが終盤でホラーに対する持論語りに着地するのは残念だった。家族で必ず紅白を見る話と鬱の女性が餓鬼に救われる話が好き。怖いだけではなく、先祖代々共に生きてきたと感じられてほっこりした。2025/08/25