出版社内容情報
貧しさのなか4人の子を失い、重病の妻を抱えた甲冑鍛冶がいた。鍛冶師──長曽祢興里は、「己の作った兜を、一刀のもとに叩き切る」ことができる刀を鍛えるため、江戸に向かうことを決意する。だが、一流の刀鍛冶を目指す興里に、想像を絶する試練が待ち構えていた……。数多の武士が所望し、後世に語り継がれる伝説の刀鍛冶・虎徹。鉄と炎とともに生き、己の信念を貫き通した男の生涯を描いた傑作長篇小説。解説・細谷正充
内容説明
貧苦のなか4人の子を亡くし、重病の妻を抱えた甲冑鍛冶がいた。鍛冶師―長曽祢興里は、「己の作った兜を、一刀のもとに断ち割る」ことができる刀を鍛えるため、江戸に向かうことを決意する。だが、一流の刀鍛冶を目指す興里に、想像を絶する試練が待ち構えていた…。数多の武士が所望し、後世に語り継がれる伝説の刀鍛冶・虎徹。鉄と炎とともに生き、己の信念を貫き通した男の生涯を描いた傑作長篇小説。
著者等紹介
山本兼一[ヤマモトケンイチ]
1956年、京都市生まれ。同志社大学文学部美学及び芸術学専攻卒業後、出版社勤務を経てフリーのライターとなる。99年「弾正の鷹」で小説NON創刊150号記念短編時代小説賞佳作。2004年『火天の城』で第11回松本清張賞、09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞を受賞。12年第30回京都府文化賞功労賞受賞。14年2月13日逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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W-G
298
この手の、もの作りや芸に魂捧げた人の話が面白くなかったためしがない。特に江戸の町を舞台にしていると、それだけで主人公に人間味が増す不思議。あらためて振り返ると、ひたすら鉄を話題に虎徹が騒いでいる場面が非常に多いのに、読み飛ばしたくなるような場面は一切なし。はたして次の刀は…?と、一緒に固唾を飲んで目が離せなくなる。妻ゆきの、ツボをおさえつつ前に出てきすぎない案配も物語の奥行きを広げている。刀の出来不出来という明確な物差しがあるゆえ、挫折や成長が読者にわかりやすいのもいいところ。2024/06/04
coldsurgeon
4
江戸時代前半期に活躍した刀鍛冶・長曾祢虎徹の物語である。一流の甲冑鍛冶が刀鍛冶をセカンドキャリアとして目指した理由、重病の妻のため、戦乱がなくなり、甲冑の需要がなくなったからだった。刀には、人の生きざまに与える別の意味もあるのではないかと考え、鉄と炎ともに生きながら、一流の刀鍛冶を目指す。砂鉄から鋼、鉄、ずくが生成される過程、それらから刀が生まれる過程が、丁寧に書かれており、とても興味深かった。刀が、鉄単独でできていないことを知り、驚いた。2024/08/03
チャゲシン
2
最上大業物、つまり数多ある日本刀でも最も斬れ味が凄いと評価された刀を鍛えた6人の一人、長曽祢虎徹の物語。いかにしてその剛刀は誕生したのか。虎徹の苦悩とともに日本刀の知識が初心者にもそれなりに知っている人にもわかりやすく描かれています。最近書かれた小説で読んだものの中では最も面白いと思います。チャゲシンの刀好きを差し引いても。2025/03/12