出版社内容情報
鎌倉時代、都でつつましく暮らす老侍。その正体は、かつて都中の人々に恐れられた大盗賊・小殿だった。足を洗った彼に興味を持ち、話を聞きに来た下級貴族の橘成季と仏師運慶、少年僧侶明けの明星の三人に、小殿はかつてある貴族の屋敷から真珠を盗んだ話を語る。客人三人は不可能と思える盗みを成功させた手口の謎解きに挑むのだが……。後鳥羽院、慈円、大姫ら鎌倉時代の重要人物たちが彩る、伝説の大盗賊をめぐる歴史ミステリ。
内容説明
日本各地を駆け抜けたダークヒーロー。彼が起こした事件が歴史さえも動かす。鎌倉時代の都でつつましく暮らす老侍。その正体は、かつてその名を轟かせた大盗賊・小殿だった。彼に興味を持って訪れた、下級貴族の橘成季と仏師運慶、少年僧侶“明けの明星”の3人に、小殿はある貴族の屋敷から真珠を盗んだ話を語る。客人たちは、厳重な警備の中で不可能と思える盗みを成功させた手口の謎解きに挑むのだが…(「真珠盗」)。あらゆる宝を盗んだ大盗賊の伝説をめぐる、本格歴史ミステリ!
著者等紹介
羽生飛鳥[ハニュウアスカ]
1982年神奈川県生まれ。上智大学卒。2018年「屍実盛」で第15回ミステリーズ!新人賞を受賞。同作を収録した『蝶として死す 平家物語推理抄』で2021年デビュー。歴史小説と本格ミステリの融合を追求する新鋭。児童文学作家としても活躍している(齊藤飛鳥名義)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
132
実在人物を巧みに使うミステリで定評のある著者が、今回は『古今著聞集』に登場する元盗賊を狂言回しに据えた。知名度は低いが様々な経験を重ねた独特の立ち位置から、鎌倉初期というカオスな時代を生き抜いたドラマは斬新で面白い。運慶、栄西、定家に慈円ら当時の知識人や権力者も彼の語る下層民の生き様に魅せられ、橘成季が記録する形で著聞集成立の裏話になるくすぐりも加わる。しかし最初から登場していた若い僧の正体が暴かれる最後の1頁で、全てがひっくり返るのだ。意味ありげに出ていた後鳥羽院の陰謀かと、強烈な衝撃を残す構成が鮮烈。2025/01/29
がらくたどん
63
平家から実権が鎌倉殿に移って早三代将軍実朝の頃。一人の老侍が著聞集編者橘成季に請われてその若き日を語り始める。彼の旧名は小殿。悪虐非道を尽くした大盗賊だ。己の悪因悪果を後悔し少しでも正道に近づきたいと出頭し検非違使に侍として召し抱えられて老年に至り独り静かに篳篥を吹く彼が請われるままに語った事件は暴力にまみれながら謎と生命力の不思議な魅力に満ちていた。大姫との邂逅・海賊働き・そして源氏物語を巡る「彼」との因縁。懺悔のような元賊徒の物語は成季が同伴する多彩な人々に果たして善果を渡せたのだろうか?善き娯楽作♪2025/03/06
rosetta
33
★★★✭☆前作では藤原定家のキャラ作りに失敗してしまったが今作ではそんなミスは侵さなかった。平安末から鎌倉初期、かつての大盗賊小殿が心を入れ替え好々爺となり、説話集を編もうとする橘成季と謎の少年明けの明星に、謎解きを含む過去の所業を語る。時に応じて加わる運慶や栄西といった有名人たち。ぶっちゃけミステリー部分の謎説きはちょいお粗末だけど、雅な時代の空気感を味わうことのほうが主目的とすれば充分楽しめる2025/05/24
ふう
21
盗賊であったことを悔い改め仏道修行に励む老人が、尋ねられるにまかせて過去の悪行を語り聞かせる体の話だが、謎かけスタイルのせいかどうも自慢話に思われて悔い改め感が嘘っぽく感じられた。真珠を盗んだ話、可憐な大姫の話はまだしも、聞き手、明けの明星に殺しを示唆したかたちになった、雪因果は酷い。2025/07/09
マカロニ マカロン
20
個人の感想です:B。1215年京に住む元盗賊の棟梁が『古今著聞集』の編者橘成季と「明けの明星(仮名)」を家に招き過去行ってきた兇悪な強盗殺人事件を語る。謎解きの形を取る6編の連作短編集。盗んだものは白珠、正倉院の薬草、源氏物語など。その話を聞きに来るのは慈円僧正、栄西、藤原定家、藤原家隆。さらに後鳥羽上皇まで登場。明けの明星が叔父殺しの話に興味を持つので、すぐ誰かが想像ついた。著者の羽生さんはその後起きる1219年と1221年の事件を念頭に、巧くパズルのピースをはめ込み、豪華な登場人物の時代小説になった2025/04/08