出版社内容情報
日常に退屈した者が集い、世に秘められた珍奇な話や猟奇譚を披露する「赤い部屋」。新会員のT氏は、これまで九十九人の命を奪ったという恐るべき〈殺人遊戯〉について語りはじめる……。江戸川乱歩の名作短篇「赤い部屋」に捧げる表題作ほか、著者が敬愛する作品へのオマージュだけを集めた、ミステリファンにはたまらない全九篇。
内容説明
K氏には人目をはばかる趣味がある。同士と共に面白半分に解剖を見学したり、降霊術を実践したりと、モラルに反する遊戯にふけっているのだ。しかし新顔のT氏は、それらを一笑に付した。自分が行うのは、正真正銘の人殺し。しかも、99人の命を徒に奪っておきながら少しも罪に問われないと言うのだ―。江戸川乱歩の名篇「赤い部屋」にさらなる捻りを加えた表題作はじめ、古今東西の傑作推理小説をオマージュした瞠目の全9篇!
著者等紹介
法月綸太郎[ノリズキリンタロウ]
1964年島根県松江市生まれ。京都大学法学部卒業。在学中は京大推理小説研究会に所属。88年『密閉教室』でデビュー。2002年「都市伝説パズル」で第55回日本推理作家協会賞短編部門、05年『生首に聞いてみろ』で第5回本格ミステリ大賞小説部門を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yukaring
71
古今東西の名作ミステリを法月さんがオマージュした物語。しかしただのオマージュではなく法月さんらしいウィットを利かせて再構築したストーリーはどれも極上の仕上がり。表題作の『赤い部屋異聞』は江戸川乱歩の「赤い部屋」から。法に触れない安全至極な殺人を繰り返して99人の命を奪ったと豪語する男の運命はいかに。乱歩の世界観を踏襲しながらブラックユーモアを利かせたオチには瞠目。ウールリッチのオマージュ『砂時計の伝言』も20ページ程度の短さながら意表をつくラストが面白い。どれも懲りにこった仕掛けに舌鼓を打つ絶品短編集。 2023/07/15
藤月はな(灯れ松明の火)
53
江戸川乱歩の『赤い部屋』が課題図書だった読書会で関連書物として紹介された本でした。猟奇に耽溺する遊蕩の志によって作り上げられた秘密倶楽部「赤い部屋」。そこでの異様な告白劇は幕が引かれた筈だった。だが・・・。『赤い部屋』を読んでいた時に思い至らなかった盲点に驚愕したが、それ以上にある真実の仄めかしが衝撃的だ。果たして「赤い部屋」で凝り、熟成された猟奇は憑りついたのだろうか。更にその後もジョン・コリアー、ウィリアム・アイリッシュ、コルタサル、都筑道夫、落語などのパスティーシュが収録されているのは嬉しい誤算。2025/04/19
雨
32
名作のオマージュ。表題作は何かで読んだ。法月綸太郎先生の作品は久しぶりだったけど面白かったな。2023/06/03
マツユキ
21
法月さんの短編を読むのは初めて。オマージュとなった作品はどれも読んでいませんでしたが、問題なく読めました。ミステリ好きとしてはもちろん、怪奇、SF好きとしても楽しめる作品でした。2023/12/06
マッちゃま
18
久しぶりの法月さん。本書は古今東西の個展名作推理小説をオマージュした9つの短編集。たとえ元ネタを知らなくても楽しめる内容なので安心して読んでみてください。江戸川乱歩をオマージュした表題作から一気に心をつかまれて、一作づつ読み進めました。ここのところ法月さんの作品は僕の理解力が追いつかず、きっと楽しみを込めたであろう部分が楽しめなかった作品が続いていたのですが、本書を読んでみてよかったです。またこういった感じのエンタメ的にも伝わりやすい内容のミステリを書いて欲しいなぁ〜と思うのは僕だけなんでしょうか?2023/07/24