火守

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火守

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  • サイズ B6判/ページ数 75p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784041114889
  • NDC分類 923.7
  • Cコード C0097

出版社内容情報

(本文より)サシャは東の孤島に立っていた。彼をこの世界の果てに放り出した帆船が、海と空の境界線に消えていく。最東端の島は、海に露出した錆さびた鉄片のようだった。周囲には命の気配すらない。
 サシャは島の奥に向かって歩き出した。何日も船酔いに苦しみ、いまだに足下がおぼつかなかったが、小さな島は中心に辿たどり着くのもすぐだった。低い丘に、彼を見つめる怪しい目のような黒い穴が開いている。穴の周りには黒い石炭の層があって、ここが炭坑であることを示していた。坑道の側の開けた場所には石窯がそびえ立ち、見たこともないほど大きな鉄鍋が載せられている。ひっくり返せば、サシャが今まで見た中で一番大きな屋根にもなりそうだ。
 といっても、サシャはこれまで遠出をしたことがなかった。大きな家を目したことだってない。ヒオリと恋に落ちたサシャにとって、大事なのは世界を見ることではなかった。だけど、彼は意を決し、彼女のために世界の最果てまで旅をしてきた。
 石窯の火は消え、巨大な鉄鍋から独特の油臭いにおいが立ち上り、辺りに漂っている。

内容説明

この世界に生きる全ての人は、空の上に自分だけの星がある。少女の病気を治すために、世界の果ての島に住む火守のもとを訪れたサシャ。独り火を守る老人は、星の位置が記された本を持つという。サシャは天に昇る代わりに、火守の仕事を受け継ぐことを誓うが―。中国SF『三体』の劉慈欣が贈る物語絵本。

著者等紹介

劉慈欣[リュウジキン]
1963年生まれの中国作家。発電所で働くかたわらSF短篇を書き始め、99年、中国のSF雑誌「科幻世界」でデビュー。銀河賞を連続して受賞し、『三体』が2008年に単行本として刊行後に大ブレイク。15年、ケン・リュウ訳『三体』(第一部)によって、翻訳書として初のヒューゴー賞を受賞

池澤春菜[イケザワハルナ]
声優・歌手・エッセイスト。2020年9月より、日本SF作家クラブ会長

西村ツチカ[ニシムラツチカ]
漫画家、イラストレーター。2010年、短篇集『なかよし団の冒険』でデビュー。同作で第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

旅するランナー

173
三体シリーズの劉慈欣による童話。人にはそれぞれの星があり、流れ星はその死を意味する。三日月の帆船、太陽への火付けなど、スケールの大きな夢を見るような、静かな感動を与えてくれます。2024/11/03

昼寝ねこ

163
『三体』の劉慈欣さんが書かれた童話。ファンタジーなのだから、月は本当に満ち欠けするわけではないとか、恒星は燃えて熱いから近づけないはずだとか、太陽の火が消えたら地球の反対側の人が困るとか無粋なことを考えてはいけない。誰もが子供の頃は純粋に空の月や星に対してこの物語のようなイメージを抱いていたはずだから。文章も良いが挿絵がとても良い。明度や彩度を落とした背景の色遣いと、あえて顔の表情を描かずに感情を表現した人物像が心に沁み入るようだ。星の王子さまやカモメのジョナサンのように末長く心に残る物語になると思う。2024/12/26

KAZOO

110
「三体」の作家による童話を日本人の画家による絵と共にたのしませてくれます。池澤さんの翻訳文も読みやすくこの画家による絵の色合いもぴったりの感じでした。やはりこの作家本来のSF的な感じもあるのですが月の存在が今までの童話などとは異なる感じをあ立ててくれました。2022/03/27

ひさか

99
2019年4月北京聯合出版公司刊の烧火工 THE FIRE KEEPERを翻訳して、2021年12月KADOKAWA刊。童話。火守という仕事が明らかになっていく過程が楽しい。こんなに童話童話した話だとは想像もできませんでした。お話にマッチした西村ツチカさんの絵が良いです。原著も絵が素敵なようで、機会があれば見てみたいです。2022/04/24

はる

93
幻想的。詩的な物語だった。著者初の童話ということだが、童話というよりもむしろ神話のような壮大な世界観。西村ツチカさんのイラストが物語の雰囲気を盛り上げている。翻訳の池澤春菜さんは声優でもあるんですね。昔、教育テレビでお姫様をやっていたような……。美しい物語だが、主人公の選択は納得いかないなあ。。2022/08/27

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