出版社内容情報
日本橋のヒーローが知恵と人情で謎を解く。 江戸人情ミステリ待望の第二弾
内容説明
小網町の白扇屋・吉野屋へ婿入りした岡三郎は、一緒になったばかりの妻に惚れ込んでいたが、どうやらまだ夫婦の契りがないらしい。それを聞いた老舗眼鏡屋・村田屋のあるじの長兵衛は、吉野屋の一番弟子が問題の鍵を握ると言い出して…(「蒼い月代」)。飛鳥山にて湯治中の長兵衛のもとを自身番が訪ねてきた。村田屋の手代頭を名乗る男が、村田屋の天眼鏡を江戸で評判の料理屋の板長へ貢げばそこへの仕入れがかなうと、王子村の豆腐屋から大金を騙し盗ったらしく…(「湯どうふ牡丹雪」)。創業百二十年を迎える老舗眼鏡屋のあるじは、知恵と人情で問題に挑むお江戸の“名探偵”。時代小説の名手による、心に沁みる極上の六篇。
著者等紹介
山本一力[ヤマモトイチリキ]
1948年高知県高知市生まれ。東京都立世田谷工業高校卒。旅行代理店、広告制作会社、コピーライター、航空会社関連の商社勤務等を経て、97年「蒼龍」で第77回オール讀物新人賞を受賞。2002年『あかね空』で第126回直木賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タイ子
82
今回も人情味たっぷりの6話の短編集。経営の傾きかけた店を立て直そうと親が仕組んだとんでもない政略結婚。大店の息子に持参金たっぷりと婿に迎え、娘には十月十日は手を出すなと、優しい婿は娘に惚れ抜いてしっかり約束を守ろうとする。その陰で親がたくらむえげつない計画を長兵衛が見事に解決する「蒼い月代」。最終話の「突き止め」が好き。一夜干し店を営む家族が父親の急死を元にバラバラに。母親が溺愛する長男はまったくの役立たず。母親が買った富くじ2千両が大当たり。家族の運命は…。安政の大地震の前後、人々の生きる姿がまぶしい。2021/07/08
紗世
25
時代小説。眼鏡屋の長兵衛さんの周りの人たちの短編集。人情ものでした。正直者は報われる話が多かったです。表題作の湯豆腐の話が1番良かったかな。2023/10/21
ひさか
23
小説野生時代2019年2月号:蒼い月夜、6月号:よりより、10月号:秘伝、2020年2月号:上は来ず、7月号:湯どうふ雪牡丹、10月号:突き止め、に加筆修正して2021年2月角川書店刊。長兵衛天眼帳シリーズ二作目。湯どうふ雪牡丹はちょっとした謎が解けるところで終わっているが、その先の豆腐が八百善とまでは行かなくとも、江戸の料亭まで届く話にならなかったのかなと思いました。が、短編なのでここまでなのかも。やせ我慢、正味、呑み込みの一力節は健在ですが、短編だと少し物足りないです。2021/06/15
Nazolove
19
やっぱり軽く江戸時代に行きたくなるときには山本さんの作品が一番だな、なんて思った。 捕物帖っていうよりは普通に江戸時代の風景が描かれた小説であった。 湯豆腐と上は来ずはいい話だったけどちょっと物足りないかなーなんていう感じの印象を受けた。 やっぱりこの方は短編よりも長編ものが似合ってるのかな、なんて思った。2021/06/16
takaya
17
6編からなる短編集。6話の「付き止め」(宝くじの話)は特によかったです。それにしても山本一力氏は、時代小説家として初期のころよりずっと円熟してきた感じで、江戸時代の慣習、風俗などを背景に人々の心情を濃やかに描き出しています。傑作だと思います。2021/12/11