出版社内容情報
古来、武をもって朝廷に仕えた大伴氏に、旅人、家持と、2代続けて歌才に恵まれた当主が現れた。愛妻の死、叔母・坂上郎女の支配に苦悩しつつ、家持は生まれながらの使命である『万葉集』編纂に奔走する!
内容説明
「歌で魂を鎮めよ」。天賦の才に恵まれた歌人、大伴家持は愛妻の自殺と娘の死に苦しみながらも、父の遺言である万葉集の編纂に乗り出した。柿本人麻呂が残したとされる無名の人々の歌集を捜し、身分の違いを超えた「国書」完成に奔走する家持。だが謀叛人の歌をも集めたことが朝廷の反感を買い、追い詰められていく。霊界の力が残り、血の政争が絶えなかった古代・奈良を舞台に、謎に包まれた大歌人の生涯を描く歴史ロマン小説。
著者等紹介
篠〓紘一[シノザキコウイチ]
1942年、新潟県生まれ。早稲田大学文学部卒。コンピュータソフトのIT企業を経営する傍ら小説家を志し、2000年『日輪の神女』で古代ロマン文学大賞を受賞しデビュー。現代的な解釈で古代史を読み解く古代ロマン小説を執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mocha
85
令和初のお正月だし、絵本『越中万葉』が好きで大伴家持についてもっと知りたくなった。けど前半読みづらくて苦戦。なにせ名前が読めない。知識不足もあるが、キラキラネームくらい難しい。小説だけどエピソードの羅列という感じで心を寄り添わすことができない。と、不満たらたら読み進むうち怨霊合戦みたいな様相になって、気づいたらのめり込んでいた。「万葉集は、偉大な神力を有する大神が鎮座する、聖なる書である」投げ出さずに読んでよかった。2020/01/06
luadagua
10
一生をかけ万葉集を編纂した大伴家持の生涯の物語。大伴の氏上として、為政者として、さまざまな権力争いに巻き込まれ時には挫けつつも、真摯に万葉集を世に出そうと奮闘するのだけど、公にされるのは家持の死後数年経ってから。それを見届け家持の霊は成仏できたのだろうな。それにしてもこの時代(奈良時代の終わり頃)の人々のメンタリティが興味深い。現世と隠り世の境目が薄く、呪術と怨霊が力を持ち、言霊の力が重んじられていた時代に編まれた万葉集は、強力なパワーを秘めた歌集だということが知れてよかった。2025/07/15
yamakujira
6
万葉集を編纂した大伴家持を、歌人としてでなく、政に参画する公卿や武人としての一面も描いているのが興味深く、政争で力を削がれていく大伴氏の動向や、橘諸兄、藤原仲麻呂、藤原百川、藤原種継、道鏡と、入れ替わり登場する権力者の栄枯盛衰もよくわかる。言霊、悪霊、呪いなどが当たり前のように語られるからファンタジーっぽく感じるけれど、それが当時の人々の心性なのだね。ところどころ顔を出す美文調の文章のせいで読みづらく、物語としてもいささか駆け足なのが物足りないものの、これ以上に長いと挫けそうだな。 (★★★☆☆)2021/09/06
Jun Shino
5
大伴家持の一代記。聖武天皇以降の時代の小説は新鮮で、好きな万葉集の成り立ちが分かって興味深い。少し怨霊系なところにほっとしたりする。 8世紀後半に成立したと見られている万葉集。全20巻4500首以上の歌が収められているが、うち1割以上の歌が大伴家持作であることから編纂に関わったとされる。名門貴族なのは分かっていたが、武人の家系、というのにちょっとびっくり。また藤原仲麻呂の乱などこんなに朝廷は荒れていたのかと、事件、陰謀、暗殺の多さにも驚いた。万葉集が神霊性を帯びた、というのは肌感覚的にしっくりくる。2020/03/22
とくま
5
×P180。 「万の言の葉」「放屁にはべろべろの神」 これまた気になるテーマだけど、物語性が薄く。2019/07/17