内容説明
恋人の七海と別れ、山崎隆二は途方に暮れていた。成人雑誌の編集部も辞め、校正者として無為に過ごす毎日。そんななか、七海の友人で行方不明になっていた風俗嬢の可奈を見たという噂を聞き、山崎は鴬谷へ向かう。彼女には会えなかったが、やがて「助けに来て」とすがりつく電話がかかってきた。山崎は囚われの身となっている可奈を救うため、海を渡った…。透明感あふれる文体で感情の揺れを繊細に綴った、至高の恋愛小説。
著者等紹介
大崎善生[オオサキヨシオ]
1957年札幌市生まれ。2000年、デビュー・ノンフィクション『聖の青春』で新潮学芸賞を、翌年には第2作『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。また、02年には初の小説作品『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おしゃべりメガネ
79
【追悼~大崎善生】『パイロット~』から始まる恋愛小説シリーズで、『アジアンタムブルー』を経ての第3弾となり、完結編になります。主人公はもちろん「山崎」さんで、『パイロット~』の4年後から話がスタートします。前2作において、これ以上ないくらいド直球な恋愛小説だったのに対し、本作は意外や意外、全体的にはサスペンスな展開で作風ががらりと変わってます。「山崎」の元から突然姿を消した「可奈」を見たという情報を受け、彼女を探すことに。改めて読むと本作においても村上春樹さんテイストがふんだんにあらわれている気がします。2024/08/09
びす男
52
伏線がたくさん残ってる。続きあるのかな。ずいぶん評判が悪いが、個人的にはまぁまぁ楽しめた。人は死にすぎだけど。2016/10/08
ワニニ
46
無力感でいっぱいの元編集者の男?主人公もストーリーも懐かしいような…と思ったら、前二作既読の三部作だった。しかし、彼は相変わらず。そんな男が素敵と思った前作までと、今作の違いは何なんだろう?退廃的な雰囲気の中、やたらとサスペンスやアクションや死が盛り込まれる(しかも投げ遣りな放り方)。いつまでも足踏みしているような男が、唐突に頭を突っ込んで都合よく進めても、違和感が残る。男の夢的な青臭さと繊細で美しい文、大崎作品の空気観は好きなのだが、どうも丁寧さに欠ける今作。空虚な救いがたい現実からの再生と言えるのか?2015/04/02
なかりょう
16
大崎さんの訃報に接して、未読本を手に取っています。『パイロットフィッシュ』や『アジアンタムブルー』に連なる作品という事ですが、読んでから20年以上のブランクがある為、独立した話という印象です。 知人である風俗嬢の行方を追って鶯谷から韓国へと舞台は目まぐるしく変わり、サスペンス調の趣もありますが、主人公の優柔不断な性格は相変わらずで、文体と相まってモラトリアル的な心地良さを感じました。2024/08/25
ウィズ
15
パイロットフィッシュもアジアンタムブルーも大好きな作品だけに今回は激しく失望しました。前2作品が好きな人は絶対に読まないでください。2015/02/09