朝日新書
吉田松陰―久坂玄瑞が祭り上げた「英雄」

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  • サイズ 新書判/ページ数 203p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784022736024
  • NDC分類 289.1
  • Cコード C0221

出版社内容情報

【歴史地理/日本歴史】松陰は、幕末、多くの志士を育てた人物として尊敬されている。だが、実はそれは虚構の松陰像。愛弟子で義弟の久坂玄瑞が松陰の死後、尊王攘夷の旗印として松陰を利用したからだ。山口在住の著者が資料をもとに、祭り上げていく過程をつづる。

内容説明

純粋で俗人離れした異端者の松陰。義弟の立場をかさに着て松陰を徹底的に利用した政治家・玄瑞。玄瑞は、松陰のことを「尊敬はしているものの、付き合うには苦手なタイプ」と思っていた節がある。しかし、安政の大獄によって松陰が非業の死を遂げると、その死の利用価値に気づいたのもまた玄瑞だった。やがて玄瑞は、亡き松陰を尊王攘夷のシンボルとして祭り上げていく。

目次

第1章 吉田松陰の実像(俗人離れした異端者;松陰誕生 ほか)
第2章 久坂玄瑞の生い立ちと松陰との出会い(玄瑞の兄の影響;相次ぐ身内の死 ほか)
第3章 松陰の妹・文と玄瑞の結婚(豊かになった杉家;玄瑞、文と結婚 ほか)
第4章 「松陰の死」を利用する玄瑞(松陰の志を継ぐ;早くも伝記編纂始まる ほか)
第5章 尊王攘夷運動の中で神格化される松陰(松陰改葬;松陰の著作が教科書に ほか)

著者等紹介

一坂太郎[イチサカタロウ]
1966年、兵庫県芦屋市生まれ。大正大学文学部史学科卒。歴史研究家。萩博物館特別学芸員、至誠館大学特任教授、防府天満宮歴史館顧問(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

国士舘大学そっくりおじさん・寺

68
大河ドラマが『花燃ゆ』だった頃の関連本だが、書いているのが一坂太郎なので面白い。文章も簡素で読みやすい。吉田松陰は処刑当時、全国的にはマイナーな存在で、地元萩では門下生達共々「乱民」視されていた。しかし幕末が佳境になる課程で弟子であり妹婿である久坂玄瑞の宣伝によって有名になり、全国的カリスマ化されていく。その課程を史料で綴る。面白かった。吉田松陰以上に知られざる久坂玄瑞の人となり(浪費家、マキャベリスト等々)が新鮮である。幕末の厭な一面も数々出てくるが、嘘の無い歴史が面白い。玄瑞の息子の写真、美男である。2018/06/03

にいたけ

44
吉田松陰の妹と結婚した久坂玄瑞、そんなに有名でなかった松陰を長州藩をまとめるために利用した。尊皇攘夷のシンボルとして祭り上げられた松陰は昭和初期に「教育者」?として突如教科書に載る。密航もテロもどこにいったのか🤔「至誠」とは心を尽くせば出来ないことは無いということ。そりゃ使われやすい言葉だな。出来なければ努力が足りない訳だから💦自己研鑽のために心に留め置くだけの言葉だな。「至誠」がわかって貰えなくて死んでしまうのって🤔楽天的すぎないか?2023/07/22

巨峰

35
大河ドラマ絡みの本。大河ドラマがえがけなかった、というか、あえて描かなかったところがのべられていて興味深い。久坂の政治的で残忍だけど仲間には信頼されているところとか、文の父は文が物心つくころには萩の警察署長のような役目についていて裕福になってたとか、久坂が長州までもどってきても文にあいにいかなかったところとか。結婚まで政治的だったのかも。2015/06/26

roatsu

16
吉田松陰と久坂玄瑞の実像を検証するとともに、倒幕政変の史実推移も俯瞰できる新書。特に狡猾な政治家の性質を持った久坂伝は印象深い。明治に至る政変を賞賛する従前の視点ではなく、内包したその数々の欠陥・矛盾も積極的に拾ってその実相を伝えていると思う。自らの性急な思想を絶対視し、その実現には殺人や積み上げてきた社会規範の蹂躙破壊も是とする松陰の幼稚で歪んだ独善性と声の大きい者につく無知な大衆という図式は昭和維新の青年将校や戦後の学生運動、最近のSEALDSの如き連中にも同質の誤りとして現れ続けてきたと感じる。2015/12/27

なつきネコ@JKな化け猫

14
久坂玄瑞が松蔭先生を利用し、尊攘の象徴に仕立て上げたのは理解できる。気になっていたが松蔭先生や久坂の金の出所は納得。杉百合之助は郡奉行所加勢暫役の職につき、お金を貰っていた。松蔭先生が貧しかったイメージも作り上げられた物かもしれない。ここで久坂は政治家だと評されている。上関三士の事件と言い、志士との交渉路線と言い納得できる。松蔭先生の墓地改葬の裏に儀式的考えには驚き。さらに楠公祭で死んだ長州志士を祭る事に、久坂が後に残したものとして靖国思想がある。知らなかった久坂玄瑞を知れて彼をまた好きになっていく。2020/09/02

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