内容説明
歌舞伎座は平成二十二年春、建替えとなって、親しまれたあの建物が東銀座から消える。五歳になった昭和十六年から歌舞伎座に通いはじめて、六代目菊五郎、初代吉右衛門はもとより戦後再建された歌舞伎座五十八年間の舞台はことごとく見てきた。そんな劇評の第一人者が、魔ものが棲むという劇場でくり広げられる祝祭と、数々の名舞台をふりかえる。
目次
魔性の棲家
改良座
劇場の顔
歌舞伎座再開場
「源氏物語」と歌右衛門襲名
吉右衛門の花道
莟会の熱狂
人間国宝の会
二人の名女形
「黄金の丘」〔ほか〕
著者等紹介
渡辺保[ワタナベタモツ]
1936年、東京生まれ。本名・邦夫。慶應義塾大学経済学部卒。演劇評論家。東宝入社ののち執筆活動にはいる。淑徳大学教授、放送大学教授を歴任。著書は『女形の運命』(芸術選奨新人賞)、『四代目市川団十郎』(芸術選奨文部大臣賞)、『黙阿弥の明治維新』(読売文学賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
16
あまり古いことは勉強中の身なので正直申し上げてわからないのだが、渡辺さんの半世紀以上に及ぶ歌舞伎への情熱が余さず伝わってくる。初心者としては「襲名と追善」あたりが面白く拝読できた。新歌舞伎座が完成したら、必ず足を運ぼうと思う。2012/12/22
kabuki o.
1
「今日のように幕が開くとまだだれも出て来ないのに拍手するといういやな習慣(一体だれをほめているのかわからないではないか)」私もそう思います。2010/05/27
ponyoponyo
1
戦後再建された歌舞伎座に毎月通い続け、ことごとく見てきたといううらやましさだが、昭和16年から通い続けた歌舞伎座で筆者が実際に見聞きしてきた体験を知ることができる。最初のほうはほとんど知らない舞台だが、後半になると実際に見た舞台や役者やエピソードなどが出てきてうれしい。歌舞伎とは、歌舞伎の神髄とはという本当に歌舞伎を愛する方の書かれた本であると感じるが、わたしはやはり絵の美しさを一番に求める歌舞伎ファンで、本当の意味での歌舞伎ファンとは言えないのかもとも思う。でも、それでいいや!2010/03/20
藤枝梅安
1
渡辺先生の新書って珍しい気がする。「江戸演劇史」を執筆した後に書かれたとのことで、筆者が初めて歌舞伎座を訪れて以来60年の歌舞伎の歴史を概観した一冊。中心はやはり歌右衛門のこと。他の新書同様、他の著作への道しるべという趣がある。劇評同様、現代の俳優では吉右衛門と三津五郎への評価が高い。2010/02/23
みつひめ
1
歌舞伎座には魔物が棲んでいる。ほんとに、その魔物に魅入られたのは、役者はもちろん、観客もまたそうだったのだということを、改めて思い知らされた。新しい歌舞伎座にも、こんなステキな魔物が棲みついてうれることを願わずにはいられない。2010/02/13