出版社内容情報
大規模な原発事故ののち、人間の立ち入りが制限された区域のパトロールを担当しているロボット「ウルトラエイト」。彼らのもとに、国税庁から派遣されたという謎の女・財護徳子がやってきた。彼女の目的はいったい何なのか? 解説は、作家の宮内悠介氏。
内容説明
立入制限区域をパトロールするロボット「ウルトラエイト」の居住区に、国税庁から派遣されたという謎の女・財護徳子が現れる。だが彼らには、人間の訪問が知らされていなかった。戸惑いながらも、人間である徳子の命令に従うことにするのだが…。
著者等紹介
恩田陸[オンダリク]
1964年宮城県生まれ。早稲田大学卒。92年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補となった『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞と本屋大賞をダブル受賞。06年『ユージニア』で日本推理作家協会賞受賞、07年『中庭の出来事』で山本周五郎賞を受賞。17年『蜜蜂と遠雷』で直木賞と本屋大賞をダブル受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
191
原発事故の話題をお叱りを受けるギリギリ一歩手前の絶妙なバランスを保ちながら、それでいて恩田さんらしいドタバタ劇と言葉遊び、そしてさりげない問題提起、さらには喧騒が去った後の独特な余韻まで感じさせてくれるこの作品。70年代の刑事ドラマのキャラ名や昭和歌謡の数々、作品の最初から最後までここまで書くかという位に登場してくる怒涛の表現の数々には、これらを知る方とそれ以降の世代では、受ける印象が相当異なるようにも感じました。自分には見ることのない遥かな未来世界の近さと遠さ、面白さと難しさを垣間見るそんな作品でした。2021/11/09
相田うえお
114
★★★★★19109 面白かったー!21世紀の半ば、全ての原発停止を求めた過激派団体と政府との交渉決裂から、原発を次々と爆破され、国土の20%が立ち入り制限区域になってしまった未来の日本が舞台。このエリアは人型ロボットが管理しているのですが、微妙〜に『お笑い?』が入ってて『とんねるずのサンバーダード(サンダーバードのパロディー)』が思い浮かんできました。ほんのりとコメディータッチではあるのですが、奥深いメッセージ性は感じられましたよ。これ、実写,アニメ,映画,TV,問わず、是非とも映像化して欲しいなぁ〜!2019/12/09
dr2006
91
原発大事故の結果、異形の姿となってしまった人々が存在する。彼らが居る場所は、放射線、感電、毒物等のハザードが物々しく人が近づけない為、立入制限区域としてヒューマノイドが維持管理している。ロボット三原則や人口減少による人的資源の枯渇、国家の脆弱化と統治不全、核のゴミ問題等コミカルタッチだが、扱う主題は重い。そんなある日、彼らが働く施設へ生身の人間、国税庁職員の徳子がやってきた。人の曖昧さとヒューマノイドの実直さによる会話の齟齬や、人と接することに慣れていないヒューマノイド達の視点(主人公)が面白かった。2021/04/10
NADIA
85
屈強なロボット(人造人間?)たちのラジオ体操で始まる物語は、シリアスなタイトルから受ける印象と真逆だ。原発事故により国土の2割と国民の半分を失った未来の日本。税収も減り、マルピー(ほぼゾンビ)と化した元人間にも課税できればと考える国税庁から派遣された財護徳子。ロボットたちは三原則に則り徳子を守りながら、自分たちの任務を進める。SF的でありながら漂う昭和臭、コミカルな語り口は『ロミオとロミオは永遠に』を彷彿とさせる。だが、この作品の舞台である未来日本の様は全くフィクションだからと言い切れない怖さを感じる。2021/02/24
mocha
73
放射能汚染によって立入り制限区域だらけになった近未来の日本。人口は激減し財政も逼迫。重いSFかと思ったら、コメディタッチでびっくりした。地域の治安を守るロボットたちが、国税庁から派遣された財護徳子に振り回され、マルピーと呼ばれるゾンビや〈猫〉に立ち向かう。随所にちりばめられた昭和ネタが可笑しい。東北出身の恩田さんだから書けた作品だと思う。九州出身だったりしたら顰蹙を買うかもしれない。2022/08/10