内容説明
近所の町医・安住先生の故郷を訪ねてみようと思い立って出かけた「因幡・伯耆のみち」。農法や農具の先進地だった歴史を振り返り、現在の過疎の印象とは違う一面に光をあてる。革命の「果実」を得ることなく倒れた坂本竜馬はじめ多くの土佐人たちの脱藩のみちをたどる「檮原街道」には、脱藩者が通るあいだ「目をつぶっていた」番所役人の子孫なども登場。南国らしい明るい紀行になった。
目次
因幡・伯耆のみち(安住先生の穴;源流の村;家持の歌;鳥取のこころ;因幡采女のうた ほか)
檮原街道(脱藩のみち)(遺産としての水田構造;自由のための脱藩;土佐人の心;佐川夜話;世間への黙劇 ほか)
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
1923年、大阪府生まれ。大阪外事専門学校(現・大阪大学外国語学部)蒙古科卒業。60年、『梟の城』で直木賞受賞。75年、芸術院恩賜賞受賞。93年、荘低勲章受章。96年、死去。主な作品に『国盗り物語』(菊池寛賞)、『世に棲む日日』(吉川英治文学賞)、『ひとびとの跫音』(読売文学賞)、『韃靼疾風録』(大佛次郎賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chantal(シャンタール)
79
鳥取県はとても小さな県だけれど、鳥取市を中心とした県東部と米子市を中心とした県西部では気質や文化や、色々な違いがある。その違いを面白がっている司馬さんが面白い。山中鹿之介に可愛がられた新十郎が亀井茲矩として、因幡で治績を残し、それが領地替えで亀井氏が津和野へ移り、西周や森鴎外と言う果実を実らせたというのも感慨深い。共に語られる事の多い島根と鳥取だけど(区別がつかない人が多いとも言う?)、私が昔から鳥取にも愛着を持っていたのも不思議はないわけだ。地元の街道はやはり良い。秋の大山登山がまた楽しみになった。2018/07/26
Book & Travel
48
先日久し振りに会った友人が昔鳥取の大学に行っていた頃、兵庫から山合の道を通って遊びに行ったのを思い出し、本書を手に取った。古代は因幡に赴任した大伴家持から戦国期の山中鹿之介と話は尽きない。特に惹かれたのはその鹿之介と縁深い亀井茲矩。小さな鹿野城の城主だがアジアと交易し、夏泊の漁村を開くなど優れた治績を残した人物。まだまだ知らない歴史があるものだ。もう一つは土佐からの脱藩の道、檮原街道。夏泊も檮原も日本の原景が残っているようで司馬さんの筆も進む印象。各地域に深い歴史があるという思いを改めて持った巻だった。2020/02/28
優希
45
竜馬が脱藩の入り口とした檮原街道が興味深かったです。久々に『竜馬がゆく』が読みたくなりました。2024/03/28
Kaz
42
山陰、土佐と私にとっては馴染みのある土地のことだけに、読んでいて情景が目に浮かびやすかった。3年前三徳山の投入堂や鳥取砂丘、白兎海岸を訪れたことや、20年以上も前になるが大山に行ったことが鮮やかに蘇ってきた。 因幡の部では亀井茲矩のエピソードが印象に残った。彼が筑前から漁師を招き、漁業技術を移殖したことなどは初めて知った。彼の子孫が津和野藩主となり森鴎外などの知性を育んだことはその人柄が偲ばれる。そこには、茲矩の舅である山中鹿之介の影響もあるようで繋がりが興味深い。2019/02/12
kawa
37
2021年最初の誌上旅は、鳥取・因幡と伯耆、高知・梼原(ゆすはら)の旅。前半はなじみのない因幡と伯耆の関係がクリア-に。訪ねたいところは、三仏寺、大山、美保関灯台等、人物で鹿野城城主で鮮やかな治績を残したという亀井慈矩(これのり)。後半は梼原・津野氏、長曾我部家にも山内家にも恩顧のない独立の地ゆえ、幕末脱藩を試みた龍馬らを緩い関所手続きで助けたという脱藩の道をグーグル地図をお供に堪能。実際に訪ねたい意欲もありなのだが、このシリ-ズを利用しての誌上旅行もはまる楽しさだ。2021/01/04