出版社内容情報
人類未踏の地が極点を残すのみとなった20世紀初頭。南極点到達に向け、ノルウェーのアムンセン隊とイギリスのスコット隊が出発した。敗れた側が全員遭難死するという悲劇的結末を迎えた歴史的レースが「なぜそうなったか」詳細に追う。
内容説明
1910年、2艘の船が南極に向けて出発した。ノルウェーのアムンセン隊とイギリスのスコット隊。一方は大成功して帰還したのに対し、他方は敗れた上に帰途に全員遭難死する。なぜそうなったのか?「勝った側」と「敗れた側」を同時並行的に叙述し、検証する。
目次
宿命の対決
極地とは
二人の生いたち
南極大陸へ
前哨戦
「その前夜」の越冬
南極点への旅立ち
山岳地帯を越えて
アムンセンの勝利
スコットの敗北
アムンセン隊の大団円
スコット隊の悲劇
二度目の春
アムンセンの遭難
著者等紹介
本多勝一[ホンダカツイチ]
1931年、信州・伊那谷生まれ。『朝日新聞』編集委員を経て『週刊金曜日』編集委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Sam
60
事実を単に羅列するだけでなく、南極点を目指す両隊の軌跡と運命を交互に描くことでドラマチックな物語に仕立てている。アムンセンとスコットの運命をあれだけ劇的に分けたのは些細な準備の差やほんのちょっとの運の違いなのだろうと思っていたが、本書を読むとなるべくしてなったものだったことがよく分かる。それにしても最後の山口周の解説はまさにその通りだとは思うのだが、せっかくのドラマチックな物語をビジネスにおける教訓に転化してしまっていて個人的にはちょっと鼻白んだ。2022/02/04
100
56
未踏の南極への初到達を争った2者の、完全な成功と最悪の失敗の対比。想像力・判断力・配慮と工夫などの差が結果を大きく分けた。敗れたた英国隊を断罪する辛辣な言葉が知らない事の罪を突く。惹きつける構成と簡潔な文章で読み出したら止まらない。ザ・名著。2023/11/05
雲をみるひと
34
アムンセンとスコット率いる英国隊の記録。両隊の行動が時系列に並べられている。結果的に身軽なプロ集団だったアムンセン隊が重厚な国家プロジェクトだった英国隊より当時未知だった南極攻略には適していたという書きっぷりになっている。同時期に装備が劣る身なだから南極を目指した白瀬隊にも少し触れられている。2022/06/18
まろにしも
19
1910年頃、人類未踏の地である南極に、どちらのチームが先に到達するか。このレースの結果は、あまりにも残酷であった。勝敗の差があまりにも大きかったから。何が、ここまでの差を作り出してしまったのか。著者は、経験とかチームワークの差などといった、分かり易い理由で安易に説明しようとはしない。緻密な事実調査の積み上げによって、要因を掘り下げる。「勝者はなぜ、そのような判断が出来たのか?」、「敗者はなぜ、そのようなミスをしたのか?」背筋が凍るような冷徹な分析。面白かった。2022/08/21
山ろく
19
1911年人類初の南極点到達に挑んだ二人の男とそのチームの成功と失敗には様々な要因が絡まり、さらに言えば準備と経験と情熱の差から生まれた誤った判断の積み重ねの結果であることが検証されていく。思いのほか記録写真が豊富で当時の極地探検の様子をありありを知ることができる一方、時系列に沿って同時並行で描かれる様は名勝負の試合経過をたどるかのような迫真性がある。わずかなほころびがやがて生死の分岐点につながる残酷さは、災害が多発する現在に通じるものでもある。それはともかく一度は南極にも行ってみたい。ただの観光だけど。2022/08/15
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