出版社内容情報
母方の祖父・岸信介を敬愛する安倍首相の父方の系譜をたどるルポルタージュ。庶民目線の政治家で反戦を貫いた祖父・寛、志を継ぎリベラルと保守のバランスのとれた政治家であった父・晋太郎。周辺者への取材を通して続く3代目の空虚さがあぶり出されてゆく。
内容説明
母方の祖父・岸信介を敬愛する安倍首相の父方の系譜をたどるルポルタージュ。庶民目線の政治家で、戦時中に反戦を唱えた祖父・寛。その志を継ぎ、リベラル保守の政治家として外相も務めた父・晋太郎。周辺取材から浮かび上がる三代目・晋三の人間像とは。
目次
第1部 寛(知られざる祖父;「富の偏在」への怒り;反戦唱え、翼賛選挙へ)
第2部 晋太郎(天涯孤独のドウゲン坊主;「異端」と「在日」;オレのオヤジは大したやつで;リベラルとバランス)
第3部 晋三(凡庸な「いい子」;「天のはかり」と「運命」;世襲の果てに)
著者等紹介
青木理[アオキオサム]
1966年長野県生まれ。ジャーナリスト。慶應義塾大学文学部卒。90年共同通信社入社。大阪社会部、成田支局などを経て東京社会部で警視庁の警備・公安担当記者を務める。その後、ソウル特派員を経て、2006年からフリーランスに。雑誌や書籍などでノンフィクション作品を発表する一方、テレビやラジオのコメンテーターとしても活動している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
140
母方の祖父岸信介を持つ 安倍元首相の もう一つの系譜 父方の祖父 安倍寛から 始まる三代を描いた作品である。 安倍一族の評伝だが、祖父に甘く 孫に厳しくなるのは 仕方がないことなのだろうか… 現代政治における世襲議員の危うさを 丹念に描いた、作品だった。2022/02/09
rico
85
不思議で仕方ない。何であんなに堂々と、見え透いた嘘を垂れ流し続けられるだろう。反骨の祖父、懐の深い父。そのいずれの特質の片鱗たりとも、彼は受け継いでいないように見える。かと言って、思想のエッセンスはともかく、母方の祖父の老獪さには及ぶべくもない。取材を重ねても何も出てこない。著者の困惑が伝わる。ただただ空虚なのだ。祖父への敬愛という色だけが淡くついた空っぽの器に、いったい誰がどんな毒を仕込んだのやら。心理学的には興味深いけど・・・。その彼が永年この国の総理大臣をやってるという現実。笑えない。2020/03/10
hatayan
48
反骨の政治家として地元で慕われた祖父・寛、政治的なバランス感覚を有した父・晋太郎、ときの宰相の晋三まで安倍三代の系譜をたどる作品。 周りに残す印象も薄く、凡庸で優れたところもない。内なる衝動から政治を志したわけでもなく、後付けで右寄りの政治姿勢を獲得していった晋三。「美しい国」「運命」といった精神的な言葉に頼る姿に、世襲政治の弊害と格差の固定が見えると指摘します。 巻末では、晋三が小学校から大学までを過ごした成蹊学園の元幹部へのインタビューを収録。暴走を続ける教え子の行く末を思いやる姿が悲痛に映ります。2019/07/03
ばんだねいっぺい
31
著者が、歴史や証言をひもとき、おじいさんは凄かった、お父さんは、偉かった、孫である彼は「普通のいいこ」で「凡庸」と「対比」させれば、させるほど、むしろ、それなのに、人臣の最高位を極め、長期安定政権を築いたのだから、稀有にして「非凡」なのではないかと思った。また、後天的に政治理念を抱いてはいけないのかとも思った。そんなことより、誰が狼なのかということこそが、今後の後継人事含め、政治の流れを決めるから、大事なんだよな。親でも反でもなくの姿勢が強まった。 2019/05/16
ぜんこう
27
著者の思想的なものを差し引いても今の三代目が首相にいるのは政治の劣化の象徴みたいなものかもしれない。 知らなかったが初代(現首相の父方の祖父)の安倍寛は、戦前。戦中と反戦をつらぬいて(大政翼賛会非推薦)で議員に当選していた。 また二代目の安倍晋太郎は「岸信介の娘婿ではなく安倍寛の息子」というのを強調してどちらかというハト派だった。 そして三代目は国会議員になるまで政治的な発言はほとんどなく、学生時代は受験も経験せず、可もなく不可もなくというボンボン、子犬のような存在だったらしい。(コメントに続く)2019/05/26