内容説明
見えない魔の手から子どもたちを守ることができるのか?埼玉県の片田舎から都内の幼稚園に赴任してきた幼稚園教諭・神尾舞子。待機児童問題、騒音クレーマー、親同士の確執…様々な問題を抱える中、幼稚園の生き物が何者かに殺される事件が立て続けに発生する。やがて事態は最悪の方向へ―。12ヶ月連続刊行企画第1弾!
著者等紹介
中山七里[ナカヤマシチリ]
1961年生まれ。作家。2009年『さよならドビュッシー』で「このミステリーがすごい!」大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
410
中山 七里は、新作中心に読んでいる作家です。本作は、中山七里デビュー10周年連続刊行企画(2020年に前代未聞の新作単行本12ヶ月連続刊行???)、第一弾とのことです。 タイトルと表紙のイメージと異なりましたが、社会派ミステリの佳作でした。少子化対策を本格的にやるなら、保育園と幼稚園をさっさと統合して、小学校の空き教室を活用すべきだと思います。いずれにしても幼稚園・保育園の教師は大変です。 https://twitter.com/10thshichiri2020/02/09
しんたろー
286
岬シリーズや『闘う君の唄を』で脇役だった神尾舞子を主人公にし、世田谷区の幼稚園へ赴任してきたところから始まる物語…お仕事小説として判り易く描かれているし、待機児童問題や住民&保護者のクレーム等、著者のメッセージを様々な人物の口を借りて提起しているので読み易い。舞子の同僚・池波を始めとして各人のキャラが見えるようなのでスイスイ読めるは流石の筆力。惜しいのはミステリとしての弱さ…凡庸な2時間ドラマみたいで、犯人は判ってしまうし動機も陳腐。12ヶ月連続刊行企画らしいが、それが本来のキレを損なっているなら残念だ。2020/03/09
ウッディ
278
園児の学力向上のために都会の幼稚園に異動になった神尾舞子。理路整然と相手を論破し、デジタルウーマンの異名を持つ彼女の前に立ちはだかるのは、騒音に文句をつける町内会長、2年連続入園できなかった子供の母親、ことなかれ主義の園長。そんな時、飼育している生き物が次々と殺される。中山さんらしくない、サプライズのないミステリーで、動機も真犯人も想定内で、少し残念な一冊でした。電車の中で化粧をする母親を注意し、論破する舞子先生のキャラをもう少し押しても良かったような気がしました。さすがの中山さんも、多作が過ぎるのでは?2020/07/20
いつでも母さん
236
中山さん、何も園児を被害者にせずとも・・が正直なところ。この『宗教法人喜徳会 若葉幼稚園』を取り巻く環境は今のこの国の縮図のような気がした。園長と保育士、待機児童、保護者会、騒音と言うご近所・・前作『闘う君の唄を』の続編だが、ここから読んでも問題はない。エピローグで子供たちの優しい気持ちが今作の救いだったなぁ。2020/02/02
nobby
167
やるせなく読まされたのは思いやりの欠片も無い身勝手な現代社会の悲哀ばかり…幼稚園児の遊ぶ様を騒音と難癖つける住民の都合、高齢者としての居直り、悲しき一人の子供の死に追悼の意も表さず己の立場を優先するお偉方に不合理の一言で片付ける輩まで…金魚やヘビを殺した場合には器物破損を適用する法律やイタズラ程度で片付ける捜査に表される人間の驕り…忙しさや最低限の責務を口実に無難な無理に翻弄されるのも痛々しいが、責任転嫁で一方的に糾弾する様にも憤り感じる…身近な危険があるのなら任せるだけでなく皆で支え合うべきでないのか…2020/02/16