内容説明
十人きょうだいの最後の生き残りが歌とエッセーで綴る家族の肖像。ふるさと“南部”に思いを馳せ、詩情豊かに描く。
目次
あかときに語りたきこと思ひ出づ親兄弟はすでにあらなく
早苗田の北上平野に雨告ぐる東根山に雲がかかり来
牛革をぬぐへば光る明治製父の形見の手提げのトランク
彼の地では「特許許可局」とわが里は「包丁取てたか」とほととぎす啼く
起きがけに窓を開ければ稲藁の焼く匂ひするひなの街なか
山峡に水の争ひ封じ込めあやに静まる人造の湖
忌を終へし厨に聞ゆる流行歌一人し聞けばなみだが溢る
豆腐屋の永年勤続感謝状苦労のあかし柩に入れる
木漏れ日の木の葉の下に隠れゐる栗を拾へば腐葉の匂ひ
夫と子を三十一文字の歌にこめ三十一で逝きたりし姉
ベランダのふた鉢の薔薇年ごとに小さくなりぬ亡き妻の薔薇
雪の野を白鳥ふたつわたり行く亡骸乗せる車の前を
著者等紹介
田口英三[タグチエイゾウ]
昭和7年11月岩手県紫波郡紫波町日詰に出生。昭和20年3月日詰町立日詰国民学校初等科卒業。昭和23年3月日詰町立日詰中学校卒業。昭和27年3月岩手県立盛岡商業高校卒業。昭和27~34年就職と結核療養を繰り返す。昭和35年5月横浜国立大学職員(文部事務官)。昭和39年3月中央大学商学部卒業。昭和40年4月東京都入庁(東京都教育委員会)。経済局、労働局勤務。平成4年3月東京都養育院(現福祉保健局)部長職を最後に定年退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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