内容説明
ファンタジー文学は空想への逃避ではなく、時に現実への挑戦ですらある。それは妄想ともつくり話とも違う。すぐれたファンタジー文学は、読み手自身のファンタジーを呼び起こし、何らかの課題をもって読み手に挑戦してくる―。心理療法家が、ストー、ゴッデン、リンドグレーン、ギャリコ、ピアス、ノートン、マーヒー、ル=グウィンの名作を読む。
目次
1 キャサリン・ストー『マリアンヌの夢』
2 ルーマー・ゴッデン『人形の家』
3 A・リンドグレーン『はるかな国の兄弟』
4 ポール・ギャリコ『七つの人形の恋物語』
5 フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』
6 メアリー・ノートン『床下の小人たち』
7 M・マーヒー『足音がやってくる』
8 ル=グウィン『影との戦い ゲド戦記1』
9 ル=グウィン『こわれた腕環 ゲド戦記2』
10 ル=グウィン『さいはての島へ ゲド戦記3』
著者等紹介
河合隼雄[カワイハヤオ]
1928年兵庫県生まれ。京都大学理学部卒業。1962年よりユング研究所に留学、ユング派分析家の資格取得。京都大学教授、国際日本文化研究センター所長、文化庁長官を歴任。2007年7月逝去
河合俊雄[カワイトシオ]
1957年奈良県生まれ。京都大学教育学研究科博士課程修了。ユング派分析家資格取得。京都大学こころの未来研究センター教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
68
なぜファンタジーが人間の根幹に関わるような要素を持っているのか、本書を読むことで少し理解できた。書き手としては、このようなガツンと来るファンタジーはどうやって発想されるのかについて考察を深めたい。ポール・ギャリコ、名前しか知らない作家だったが読んでみたい。2019/01/10
南北
45
心理療法家の著者がファンタジーを読み解いた本。著者はファンタジーが「たましいの真実」をそのままに伝えているとしている。語り口もうまく、読んだことのない本も内容が伝わってくる。取り上げられた作品の中では「トムは真夜中の庭で」を読んでみたいと思った。日本のファンタジーが取り上げられていなかったのは少し残念だが、今後読むときに著者の提示してくれた観点で読んでみるのもおもしろいと思った。2021/06/25
井月 奎(いづき けい)
35
ファンタジーが伝えることは星のように数多くきらめいています。著者はその中から、「たましい」を伝え、表す文芸としてとらえているように思えます。心理療法士らしいアプローチでのガイドブックでもあり、これを読んでから取り上げた作品を読んでも良いですし、逆でも良いでしょう。作品への洞察が深くなり、たましいや夢が人や、人の関係にあたえる影響が少しわかるかもしれません。日本発長編ファンタジーの不毛を嘆いていた著者がもう少し長生きして、上橋菜穂子を読んだならどのように激賞したのでしょう。想像しただけで楽しくなります。 2017/03/13
アオイトリ
29
忙しすぎる毎日を見直したくて)河合隼雄のオススメで気分転換をしようと。ファンタジーは自律性をもって迫ってくる。人間が圧倒されてしまうと妄想に囚われることになるし、作者の意図が強すぎると作り話で終わってしまう、という説明はわかりやすい。ゴッデン「人形の家」リンドグレーン「はるかな国の兄弟」マーヒー「足音がやってくる」など未読はこれからの楽しみ。「ゲド戦記」の魅力を余すところなく披露されているけれど、読むにはエネルギーチャージが必要かなと思う。2024/09/22
sheemer
17
図書館本。どこかでキャサリン・ストーの「マリアンヌの夢」を知り、探しているうちにこの本に辿り着きました。そのストーリー自体はこの本では読めなかったんですが、ゲド戦記の解釈で自分が気づかなかったことなどが指摘されていて、面白く読めました。ゲド戦記再読しよう。2023/07/17
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