内容説明
政友会、民政党の二大政党が牽引した戦前の政党政治はなぜ凋落し、戦争に抗うことができなかったのか。本書は選挙と金、党勢拡張、政党不信など民衆と政党が関わる諸問題にも着目しながら、テロが頻発し戦争への道を転げ落ちていく激動期における戦前政党の実像を解明する。戦前政党の可能性と限界とは何だったのか。政治家個人をいきいきと描き出しながら戦前政党の崩壊史を通観する力作。
目次
没落期の政党政治
政党内閣と特権勢力
政策対立の現実
選挙と党略
政友会と民政党
政党と地方政治構造
危機における政党政治
政党政治の凋落
政党解消
戦中から戦後へ
著者等紹介
粟屋憲太郎[アワヤケンタロウ]
1944年千葉県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科国史学専攻博士課程中退。現在、立教大学教授。専攻・日本現代史。米国等で東京裁判関係史料を発掘し、東京裁判をはじめとした戦後史像の解明に貢献している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
13
戦前の政党を知るにはすごく良い一冊。政友会と憲政・民政党を中心に、地方組織や政治資金、選挙手法など一通りのことがわかってなかなかお得。今以上にお金の問題がワヤになっていて、財閥から金引っ張れる奴がエラいというのが露骨すぎ。また府県知事など地方官も官選なので、政権交代ごとに知事が入れ替わるなど、今に無いダイナミック感も面白い。民意をいかに政治に反映させるかという問題に対し、政党が上手に対応できず、権力の枠外に置かれて「自壊」していったという歴史は、現代日本の民主主義を守る上でも忘れてはいけないことである。2025/02/06
馬咲
3
戦前の二大政党、政友会と民政党の組織構造、財源、支持基盤等について勉強になった。政党自体が法人格を持たない曖昧さを抱えていたり、民主的法案にとって高い壁だった非民選の貴族院や枢密院の役割など、戦前の政党が民主的組織になりきれなかった要因を考える際は国制上の限界も考慮する必要があるが、幹部専制、資金源の多寡に応じた党内階層など戦後政党にも通ずる問題点は多い。軍部との関係では、普選導入後に在郷軍人会を支持基盤へ取り込んだことによる政党側の親軍化傾向の指摘が、後の満州問題を巡る内紛の実相への視野を広げてくれた。2024/05/12
Francis
1
戦前の政党政治を立憲政友会、民政党の2大政党を中心に考察する。戦前の政党政治が元老、貴族院や枢密院などの特権階級によって発展を阻まれ、党利党略によって国民の不信を招き、軍部に迎合して自滅していく過程を知ることは、政権交代が実現したにもかかわらず政治が混迷を極める現代日本の政治の今後を考えるうえで大いに役立つと思う。2012/10/25
Ikkoku-Kan Is Forever..!!
1
この本を最後まで読むと、この本の主役が実は斎藤隆夫だったことに気がつきますねw 個人的に政党政治についての興味は2つ。一つは、1920年代に政党政治が実現した条件。これは明治からの追っかけです。もう一つは、1930年代という結果の理由。つまり政党政治崩壊の条件です。この本を読むと、昭和維新の歌の歌詞を思い出すほどに随分、政党も酷いですね。でも「自滅」とするには、彼らにとってその時代を考えると酷かもしれない。政党政治とは何だったのかという問題を、明治憲法とは何だったのかという観点から再考したい気がします。2012/01/26
かじやん0514
0
労作。戦前の共産党の極左的性格については、戦前の政党政治がなぜ・いかに没落したかという本書のテーマからしても、もっと突っ込んだ考察がほしかったが。2009/09/10