岩波現代文庫
猫の大虐殺

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  • サイズ 文庫判/ページ数 360p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784006001858
  • NDC分類 235.05
  • Cコード C0122

内容説明

一八世紀初頭のある日、パリの労働者街の猫がのこらず殺された、と記す印刷職人の手記は、何を物語るのか。史料の奥底に隠された大革命以前の人びとの心性に、わずかな手がかりをもとに犯人をつきとめる名探偵のような鮮やかな推理で迫る。社会史研究の先駆的達成と評価される原書から、中核的論文四本を抜粋して収録。著者自身による解説も兼ねた「第三版への序文」を付す。

目次

農民は民話をとおして告げ口する―マザー・グースの意味
労働者の叛乱―サン・セヴラン街の猫の大虐殺
作家の身上書類を整理する一警部―フランス文壇の分析
読者がルソーに応える―ロマンティックな多感性の形成

著者等紹介

ダーントン,ロバート[ダーントン,ロバート][Darnton,Robert]
1939年、ニューヨーク生まれ。ハーヴァード大学卒業後、オックスフォード大学でPh.D.(歴史学)取得。プリンストン大学歴史学教授を経て、現在、ハーヴァード大学図書館館長

海保眞夫[カイホマサオ]
1938年生まれ。慶應義塾大学文学部教授。2003年没

鷲見洋一[スミヨウイチ]
1941年生まれ。中部大学人文学部教授、慶應義塾大学名誉教授。文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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蛇の婿

17
くだんの猫の大虐殺を扱う章は第2章になります。基本は全編を通じ記録としては残されていない中世のフランスの庶民の生活などを、民話や資料などを駆使して考察するという内容になっています。原書は6章あるうちの3章と5章が日本語訳では未訳。…うーむw これは全訳してほしかったなぁ…私はやはり2章目の猫の大虐殺事件を扱う『労働者の叛乱』とラスト『読者がルソーに応える』が非常に面白く興味深いです。読みだしたはいいけれど急に仕事が忙しくなって放り出したり読んでる途中に行方不明になったりなかなか不幸な境遇の本でありましたw2016/05/22

シャル

11
歴史の片隅、18世紀フランスの人々の暮らしぶりを、様々な文章の断片をつなぎ合わせて紐解いていく論文集。そのインパクトあるタイトルである『猫の大虐殺』は、まさに当時の市民とブルジョアの価値観の違いを浮き彫りにし、その中において猫がどういった存在であった、そして猫の虐殺がどういう意味合いを持っていたのかが明確にされるものである。また、ルソーの読者の手紙から本そのものの価値や意味が異なる当時の読書のあり方を考え、知ることが出来るのも興味深かった。異なる価値観の正体とその行方を一つ一つ探り出していく一冊である。2017/03/05

∃.狂茶党

9
フランスに限らず、欧州の若しくは世界中の、農民、一般庶民はひどく貧しく、生きているのが不思議なくらいの環境で、命の値段はなきに等しい。 ごく当たり前に人が死ぬ世界。 そんな世界で、物語は楽しみであり、戒めであり、息抜きとして機能する。 教会などの権力筋からの物語も混在するのだろうが、ここに取り上げられているのは、腹が膨れることが大変なご褒美、そんな日常で生きてきた物語だ。 空想の世界に、殺伐とした感性が窺える。 2022/03/29

子音はC 母音はA

4
この表題論考を含む4つの論考は、従来の歴史学では扱わない資料を、人類学、民俗学的視点で読み解き18世紀の精神状況・社会状況を読み解こうとしている。「労働者の反乱――サン・セヴラン街の猫の大虐殺」では労働者の日記から、猫の大虐殺事件を取り上げ、そこから当時の大衆の精神構造を明らかにする。他、三編も思わぬ資料の拾い出しから当時の様子を紐解いていく。歴史を為政者だけではなく、民衆側の(下からの視点)で読みとく良書。2014/07/10

いきもの

3
猫を大虐殺する衝撃的なタイトルですが、大虐殺というほど大規模なものではありませんでした。労働者のブルジョアへの間接的な反乱としての工場周辺猫駆除祭。その他3篇の論考から、18世紀フランス、パリのさまざまな階級世界の精神世界を、民話、警察による著作家監視目録、ルソーの小説への読者の反応等から覗き見できる。2020/07/30

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