出版社内容情報
宗教意識は人間の生命力が失われ自己が逆光をあびるときに生ずる.宗教は個人の内面とともに集団・制度に関わる.日本人の宗教意識を日本独特の倫理観から読み込み,イスラム教国での体験等にもふれる注目すべき論考.
内容説明
宗教的な意識の出発点である「虚無の自覚」は、人間の生命力が自ら発する光とエネルギーを失い、自己が逆光を浴びるときに生ずる。そして宗教は個人の内面の問題にとどまらず、集団・制度に関わる事柄でもある。日本人の宗教意識を宗教的混淆や独特の倫理観から読み込み、オウム真理教事件に対する独自の解釈やイスラム教国での体験などをも織り込んで展開する注目すべき論考。
目次
第1章 逆光の存在論―「悪」の問題を再考する(「宗教とはなにか」という問いの特殊性;西谷啓治の宗教論を超えて ほか)
第2章 問い直された日本人の宗教心―仏教・儒教・道教(日本人の宗教心を振り返ると;隠されていた儒教 ほか)
第3章 「誠」という道徳的価値(『善の研究』の第三編を読みなおす;「純粋経験」と「善」の研究 ほか)
第4章 先端技術時代の宗教意識(ミンスキー・ショック;フランクリンの宗教的態度 ほか)
第5章 イスラム教国でのささやかな体験から(インドネシア、湾岸戦争、モロッコ;モロッコ王立アカデミー―旧知のエルマンジャラ氏との出会い ほか)
著者等紹介
中村雄二郎[ナカムラユウジロウ]
1925年東京生まれ。東京大学文学部卒業。哲学者。明治大学名誉教授
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感想・レビュー
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Bevel
1
中村雄二郎の本は初めて。とても面白かった。「誠実であればいいってわけじゃない」って自分も思う。ただ、宗教の内部にいる人間に対して、その外側にいる人間がどのように危険性を喚起しうるか、そして、回心を起こしうるかという問いにもっと突っ込んでもらいたかった。神の歴史性、物語性がすり変わる瞬間は、どのように訪れるのか。アウグスティヌスと親鸞の「回心」だと、言葉では伝えられなくなってしまうように思う。するとカルト教団の暴走に対して社会がとる手段はなくなってしまうのではないか。2010/02/10
ホムサ
0
うーん、難しい。 日本人は普段「宗教」なんて意識してないから仏教だけじゃなくて儒教由来の者もあるし、実はキリスト教やイスラム教からも入ってきてるかもしれない。 2017/08/03
SK
0
179*目次から予測してはいたが、自分にはちょいと難しい部分もあった。「逆光の存在論」って何だろう。「純粋な受動性が限りないエネルギーと永遠の生命を受け取る」というのは、あまり納得できなかった。2014/09/22
kenken
0
日本人の宗教観、善悪と儒教の関係、そしてインドネシアとイスラーム。私が興味をもつようなテーマがじつに魅力的に散りばめられて、一緒に思考の旅にでられるような本。ただ、いろいろヒントはくれるが旅の途上という感じ。儒教論は下敷きにしている加地伸行を直接当たるべき。2012/01/01
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