出版社内容情報
世界暦と黙示的文学が終末意識を突き動かすとき、ヨーロッパの歴史は大きく躍動した。古代末期に源流をもつ地中海=ヨーロッパの歴史を、人びとを駆動し「近代」をも産み落とした〈力〉の真相とともに探究する。「世界」を拡大し、統合した〈力〉とは何か。ナショナリズムと国民国家を超えた、汎ヨーロッパ世界展望の旅。
内容説明
世界暦と黙示的文学が終末意識を衝き動かすとき、ヨーロッパの歴史は大きく躍動した。古代末期に源流をもつ地中海=ヨーロッパの歴史を、人びとを駆動し「近代」をも産み落とした“力”の真相とともに探究する。「世界」を拡大し、統合した“力”とは何か。ナショナリズムと国民国家を超えた、汎ヨーロッパ世界展望の旅。
目次
はじめに―ヨーロッパ史とは何か
第1章 大帝を動かす“力”―伏流水
第2章 終末と救済の時間意識―動力
第3章 ヨーロッパ世界の広がり―外延
第4章 近代的思考の誕生―視座
第5章 歴史から現代を見る―俯瞰
おわりに―統合の基層
著者等紹介
大月康弘[オオツキヤスヒロ]
1962年生まれ。1985年一橋大学経済学部卒業、同大学大学院経済学研究科修了、博士(経済学)現在、一橋大学大学院経済学研究科教授、同大学理事・副学長。専攻、ビザンツ史、経済史、文明史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
73
著者も「あとがき」で断っているように、いわゆる通史ではなく、どちらかというと『史論』と言うべきもの。ヨーロッパの根源を東ローマ=ビザンツ帝国とキリスト教に求め、そのエネルギーが伏流水のように脈々と流れているとする。この前半の中世の部分は著者の専門でもあり面白かった。しかし後半の近代ヨーロッパに関しては、ほぼ著者のモチーフが語られている感じで、印象としてはかなり東、つまりドイツよりに思えた。確かにビザンツの伝統は東の方が強く影響しているとは思うが、特にフランスにあまり触れられていないのがちょっと不可思議。2024/02/03
よっち
27
古代末期に源流をもつ世界を拡大し、統合した力とは何だったのか。ナショナリズムと国民国家を超えた地中海=ヨーロッパの歴史を展望する一冊。ユスティニアヌス、カール、オットー一世といった大帝と呼ばれた皇帝の事績に始まり、自然災害やパンデミック、世界年代記や終末論思想の出現、ビザンツ帝国に見る世界の広がりや、レコンキスタとコンスタンティノープルの陥落、近代的思想の誕生、そして近代化の中で国家と社会をどう捉えるかを解説する内容は、通史ではないもののいかにしてヨーロッパが形作られたのかを知るいいきっかけになりました。2024/02/26
MUNEKAZ
13
ビザンツ帝国史が専門の研究者によるヨーロッパ史ということで、わくわくしながら読んだのだが…うーん。前半のパート、終末論の流行や「暦」の問題といった部分は面白かったのだが、近代ヨーロッパの源流は古代の「オイコノミア」にあったのだというあたりからついていけなくなり…。著者の問題意識はつかめぬままとりあえず読み終わりました。ギブアップです。2024/01/24
さとうしん
12
英仏独などの各国史ではなくヨーロッパ世界を一体のものとして見るヨーロッパ史……だと思う。古代末期から中世にかけての大帝の時代の部分が私にとっての読みどころだった。著者の専門柄「ビザンツ」に関する話が多いが、西暦が誕生したのはユスティニアヌスの時代であるという点や、コンスタンティノス7世が息子のために作ったという『帝国の統治について』の百科全書的な性質が『呂氏春秋』に似通っていること、ビザンツ帝国が周辺諸地域を子ども、兄弟など擬制的親族関係に擬えていたのが宋王朝のそれを連想させることなどが興味深い。2024/02/03
ぷほは
6
大戦期前後に出てきた近代相対化の歴史観がピレンヌやブローデルの作品で、それらはEUにつながる「ヨーロッパ」の文化的統一への希望という意味も含まれていた。当然そうなると古代末期からの地中海世界へとまなざしが注がれ、キリスト教的世界観が胚胎した「個」の思想や都市のオイコノミアの系譜が、アガンベンやフーコーの解釈を頼りに辿られる。おそらくウォーラーステインはもっと穏当な結論に至っていると思われるので、アガンベンやフーコーがさらっと流されているのが気になるが、これまで自分が勉強してきた流れを跡付けることができた。2024/01/29