出版社内容情報
幻覚や妄想などの症状,経過,他の精神科の病気との違い,リスク因子,治療,歴史と社会制度を解説する.
内容説明
幻覚や妄想が生じるが、本人はそれを病気であるとわからないこともある。青年期から成人期前期を中心に一〇〇人に一人近くが患うこの病気は社会生活への影響が生涯にわたるのにあまり知られていない。経験ある精神科医が症状、経過、他の精神科の病気との違い、リスク因子、治療、歴史と社会制度などをわかりやすく解説する。
目次
第1章 統合失調症とは
第2章 統合失調症の症状
第3章 統合失調症の経過
第4章 他の精神科の病気との違い
第5章 原因とリスク因子
第6章 治療
第7章 歴史と社会制度
第8章 病識と妄想―統合失調症特有の問題について
第9章 社会とのかかわり
著者等紹介
村井俊哉[ムライトシヤ]
1966年、大阪府生まれ。1998年京都大学大学院医学研究科修了(医学博士)。マックスプランク認知神経科学研究所を経て、京都大学大学院医学研究科教授。専門は精神医学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ろくせい@やまもとかねよし
188
大学院教員による統合失調症の論説。平易な記述で理解しやすい解説。統合失調症について、現代医学の精神疾患における位置付け、症状である妄想と幻覚、ほとんどの原因の未解明、作用機序は不明ながら効果的な薬物療法を中心とした治療を紹介。さらに精神病と括られた病気が、精神異常より神経異常で解されてきた歴史も解説。主張は明快で「統合失調症は妄想と幻覚をともなう病気」である一方「症状が個人意識に依存するため一般化が困難」だが、社会の正しい病気の知識と経験からの福祉対応を期待。ただ健常と病気の二元で理解できない気もした。2020/04/02
佐島楓
73
書き落としている点がちらほらあるように思う。患者の平均寿命が短いとされているのはおそらく多剤投与による副作用が引き起こした内臓疾患も考慮に入れなければならないし、薬物治療においても具体的な商品名が記述されていない。患者に対して近親者がどう接すればよいかといった点も記述不足である。これでは病気については詳しいことが何もわかっていないということしかわからず、読者が不安になってしまうのではないだろうか。2019/10/21
キムチ27
53
「対象をどの辺に置くか腐心した」だけあって、読みやすい。2019 秋第一刷。筆者は50歳台現役医師。両論併記の手法に基づき、多数の専門職から奇譚ない意見を貰ったとある。人権との関係でデリケートな振幅を持ってきたこの病気。脳科学においても最後の要課題とされている。社会がさらなる関心を持ってほしいとするメッセは、クリア出来ている。統合失調症本人とその関係者の現実を見ると、日常生活での微細なうねりは減っていない。関わっている一人として、こういった新たな本は知識の同期化にかなり役立った。2020/01/05
禿童子
41
統合失調症をあえて「普通の病気」にしたい気持ちと、それに対して実際に精神病院で行われている拘束の実態を包み隠さず説明する筆者の態度は臨床にたずさわる医師の葛藤そのままですね。インフォームド・コンセント(納得診療)が成り立たないこと、つまり患者を守るための医師の判断による強制入院が現実です。薬物治療が一定の成果をあげたこと、精神科医の世代が変わるにつれてこの病気に対する見方が変わってきたこと(普通の病気化)、ヤスパースによる妄想の定義が宗教的信念に当てはまってしまうことなど、興味深い論点が多い好著ですね。2020/09/29
ころこ
38
心の病気は社会個人に例えるときに比喩として非常に有効です。スキゾを兆候的と表現し、流動化した社会の向かう流れを先取りする時代精神に使っていたのはもう30年以上前のことです。本書はそういった微温的なイメージが社会の理解を妨げている、その無理解が患者の立場を悪くしているといいます。まず、この病気と断ち切れているのは社会との因果関係です。他の病気と同じく個人で完結している。そして機能性よりも器質性に原因を求めています。統合失調症の因果関係に脳科学の成果を用いて説明しようとしていることが、図らずも心脳問題に接近し2020/09/25