出版社内容情報
「これは絶滅戦争なのだ」。ヒトラーがそう断言したとき、ドイツとソ連の血で血を洗う皆殺しの闘争が始まった。日本人の想像を絶する惨禍。歴史修正主義の歪曲を正し、現代の野蛮とも呼ぶべき戦争の本質をえぐり出す。
内容説明
「これは絶滅戦争なのだ」。ヒトラーがそう断言したとき、ドイツとソ連との血で血を洗う皆殺しの闘争が始まった。想像を絶する独ソ戦の惨禍。軍事作戦の進行を追うだけでは、この戦いが顕現させた生き地獄を見過ごすことになるだろう。歴史修正主義の歪曲を正し、現代の野蛮とも呼ぶべき戦争の本質をえぐり出す。
目次
第1章 偽りの握手から激突へ
第2章 敗北に向かう勝利
第3章 絶滅戦争
第4章 潮流の逆転
第5章 理性なき絶対戦争
終章 「絶滅戦争」の長い影
著者等紹介
大木毅[オオキタケシ]
1961年生まれ。立教大学大学院博士後期課程単位取得退学(専門はドイツ現代史、国際政治史)。千葉大学ほかの非常勤講師、防衛省防衛研究所講師、陸上自衛隊幹部学校講師などを経て、現在、著述業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
260
近代戦で国家と国家が総力を挙げて広い国境線を巡って、戦うとこうなると言う貴重な事例だなと思う。日本は狭い島嶼戦になるしイメージしづらいが、中々大陸上の戦いって海という隔たりがないから悲惨なものになると知った。にしても悲惨と言うしかないレベルで犠牲者が多過ぎるし、今後は核兵器による戦争中心になるので、こういう事が起きにくいとは思うが、こういう戦争が第二次世界大戦であったことも忘れてはならない。2019/07/31
旅するランナー
254
その規模の大きさ、戦闘の激しさ、被害者の多さがつかみきれない、人類史上最大にして、最も血生臭い戦争。血で血を洗う皆殺しの収奪戦争・絶滅戦争・絶対戦争。ヒトラーの狂気vsスターリンの強権だけでなく、ドイツ国防軍の加担・国民の共犯、ソ連による共産主義イデオロギーとナショナリズムの融合、両国の選民思想による他国民の蔑視などがルール無視でぶつかり合い、空前絶後の暴力を生み出す。他人事では済まされない実態を見るにつけ、この未曾有の殺戮戦争を人類の体験として理解し反省し繰り返さないことが大切なのだと感じます。2020/03/30
rico
237
本書によれば第二次大戦の国別の死者は次の通り。日本 人口約7100万人→死者約300万人(4.2%)。対して、ドイツ6930万人→死者800万人(11.6%)。ソ連 1.89億→2700万人(14.3%) 日本もさることながら、ドイツ、ソ連の犠牲者の数は凄まじい。作戦の展開や意思決定のプロセスなどを丹念に追いかけ、両国の戦いが何故こんな結果をもたらしたのか、読みといていく。ヒトラーとスターリン、2人の特異な世界観を持った独裁者が同時代に存在した不幸。1つ1つの事実の向こうに地見える地獄。読むのが辛かった。2020/01/15
読特
218
沖縄戦、特攻隊、東京大空襲、原爆・・。日本人の死者は300万人。しかし、それを遥かに上回ったのが独ソの死者。特にソ連は桁違い。先の大戦の結果である。一体何が起きたのか。「バルバロッサ」の奇襲攻撃。「ドイツ軍は強かったが、冬将軍に負けた」という漠然としたイメージ。もちろんそんなに単純なものではない。初めは勢いがよかった。しかし所詮は勝ち目がない戦い。そこは真珠湾と共通する。なぜ始まってしまったのか?戦後の秩序を決めた経緯は?200ページ強の丁寧な解説。もっと知りたい、もっと考えたい、よいきっかけになる。2020/06/26
蜻蛉切
188
「独ソ戦」の入門書として最適な良書との印象。 アカデミックな研究の成果を我々の様な「非アカデミック」な人間でも理解できる様、整理して提示してくれている。 以前にも書いたが、自分の世代は著者が厳しく批判している「パウル・カレル」の洗礼を浴びた世代だし、「国防軍善玉」論的なスタンスの書籍しかなかった時代(素人向けにはという意味)だったので、本書の内容とは随分違った理解が主流であったので、隔世の感アリだ。 我が国でも漸く「軍事史」に光が当たりだした気がする。 巻末の参考文献もグッドです。2019/07/27