出版社内容情報
中世寺社勢力を担ったのは,南都・北嶺などの大寺社ばかりではない.全国無数の寺社にこもる衆徒・神人,隠遁者,聖など,さまざまな聖職者たちの活動があった.寺社勢力はいかにしてその巨大な力を獲得し,どのような歴史的役割を果したか.聖職者たちの生活や意識に光を当てつつ,宗教と社会とのかかわりを描く.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nagoyan
17
優。再読。1980年刊。当時、黄版といえば(古色蒼然とした、ある意味、イデオロギー的な感じがする赤版や緑版とは異なって)最新の学問の香がした。本書もそういった一冊だった。中世社会において、寺社勢力は世俗的権力とは深い関係を持ちながらも、宗教生活が大きな意味を持つ中世社会特有の権門として独自の意味と機能を有していた。その寺社勢力の中世をとおして存在した枠組みは、顕密体制である。浄土信仰、日蓮宗、禅宗といった鎌倉新仏教も、顕密体制の補完的存在だった。と。2022/11/05
零水亭
15
(1993年頃、読みました)
moonanddai
7
中世社会の政治的・社会的核は公家・武家のみならず、南都北嶺を中心とする寺社勢力(いわゆる顕密仏教が、ほぼ占めると考えてもいいかもしれません)があった。そしてそれは全国無数の寺社にまでの広がりを持ち、そこには学侶のみならず衆徒(と言われる寺社の世界で糧を得る人々)、神人、隠遁者、聖や(網野氏が言う)「芸能民」(商工業者や狭い意味での芸能の民、いわゆる非人など)がなどが内部そして周辺に含まれ、公武のみならず内部的にも対立しつつ依存しつつ、「あった」というイメージになるようです。2022/04/04
Hiroki Nishizumi
6
ちょっと教科書的な記述で読み応えあった。当時の権力構造で相当な場を占めていたことは分かる。2019/06/02
アメヲトコ
6
中世における寺社勢力の興隆から衰退までをさまざまな角度から描いたもの。大昔に読んだ気もしますが、当時の記録がないのであやふや。1980年という時代を感じさせる箇所もありますが、目配りの広さ、叙述の体系性などはまさに名著。2016/10/25