出版社内容情報
中世寺社勢力を担ったのは,南都・北嶺などの大寺社ばかりではない.全国無数の寺社にこもる衆徒・神人,隠遁者,聖など,さまざまな聖職者たちの活動があった.寺社勢力はいかにしてその巨大な力を獲得し,どのような歴史的役割を果したか.聖職者たちの生活や意識に光を当てつつ,宗教と社会とのかかわりを描く.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nagoyan
19
優。再読。1980年刊。当時、黄版といえば(古色蒼然とした、ある意味、イデオロギー的な感じがする赤版や緑版とは異なって)最新の学問の香がした。本書もそういった一冊だった。中世社会において、寺社勢力は世俗的権力とは深い関係を持ちながらも、宗教生活が大きな意味を持つ中世社会特有の権門として独自の意味と機能を有していた。その寺社勢力の中世をとおして存在した枠組みは、顕密体制である。浄土信仰、日蓮宗、禅宗といった鎌倉新仏教も、顕密体制の補完的存在だった。と。2022/11/05
白隠禅師ファン
16
中世の宗教史の変遷について知りたくなったため、手に取りました。寺社勢力が中世社会に及ぼした影響、王法・仏法論、顕密体制論についての概略本という感じですね。ただ正直まだ消化不良な箇所があるので、勉強します。2024/12/30
Toska
16
『中世的世界の形成』(https://bookmeter.com/books/97153 )では東大寺が古代の残滓扱いを受けていた。また中世史に限っても、大寺院の政治活動はグロテスクな現象として冷ややかに見られることが多い(延暦寺なんて信長に焼かれて当然という風潮)。だけど本当はそうじゃない、寺社勢力は中世の政治史に欠かせないプレイヤーだったんですよという骨太な主張。文体は新書にふさわしく平易で読みやすい一方、読者への迎合に堕すことのない鋭さがある。これもまた古典だ。2024/11/14
零水亭
15
(1993年頃、読みました)
かもすぱ
14
中世において、朝廷でも武家でもない独立性を持った「寺社」がどのような影響力・支配力を持っていたかを覗き見る本。奈良時代の勃興、平安期の隆盛、鎌倉期の改革、室町・戦国期の勢力としての没落まで。当初研究機関として存在した寺院が、政治や経済的に影響力を持ってゆく様は、どこか大学生や議員と通ずる行動や思考を感じた。比叡山や興福寺のしたたかさや、崇高な僧ばかりではないある種多様性のある門人たちの生活が見えて面白かった。2024/06/25
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