出版社内容情報
個人が圧殺される事態を憂慮し,自由に対する干渉を限界づける原理を示した古典的著作.待望の新訳.
内容説明
個人と社会が絶えず活力を保ちながら向上していくには、自由と多様性が欠かせない。この前提に立って、大衆の画一的な世論やエリートの専制が個人を圧殺する事態を憂慮したJ.S.ミル(1806‐73)は、自由に対する干渉を限界づける原理を提示した。現在もなお自由を考える際に欠かすことのできない古典的名著の明快かつ確かな翻訳。
目次
第1章 序論
第2章 思想と討論の自由
第3章 幸福の一要素としての個性について
第4章 個人に対する社会の権力の限界について
第5章 応用
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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
101
ミルの自由論は、高校時代に「On Liberty」を一部(どこだったかを覚えていません)英語で読んだことがあり、日本語をしてもかなり難しかったことだけを覚えています。結構経済学的な分析をしていて(経済学原理という著作をものにしています)、税金のことなども書かれています。解説が懐かしい木村健康先生であとがきが吉野源三郎となっています。2024/05/11
かわうそ
48
「他者に苦痛を与えない範囲内で自由が認められるべきだし、自由を根とする多様性は真理にも貢献する。」というのがミルの言いたいことだと思う。人の意見はそれぞれ少しずつ真理を含んでいるのが常であり、どちらが正しいかというのではない。もし、片方にだけ真理が含まれているとしても間違っている方の意見によって正しい意見が際立つという点で役に立つのである。よって多様性は保護されるべきあって、決して不正に規制されるべきではない。他者に苦痛を与える行為については他人の自由を守るために当然、政府あるいは世論によって規制される。2024/05/07
イプシロン
41
我々の自由をもっとも阻害するのはなにか? という問いに論究してはじまるのが、本著『自由論 'ON LIBERTY' (1859年)』である。そうして導き出されるのが「多数者の暴虐」という阻害因であり、人々が抱えている半無意識の慣習道徳という大衆心理であると語られる。そこで著者は、そうした阻害因に対抗するには如何なる方法が有効かを提示してゆく。言論の自由、議論の自由(真理追及の自由)、思想・信条の自由などである。しかし、そうしたことに関する著者の言及は我々が常識として知っている範疇を超えた深さをもっている。2022/06/06
壱萬参仟縁
35
新訳が3月に出たので。図書カードと現金で購入。本書の主題は、市民生活における自由、社会の中での自由。個人に対して社会が正当に行使してよい権力の性質と限界(11頁)。過去の闘争で自由が意味していたのは、政治的支配者の専制から保護される、ということ(12頁)。自由は保護者の責務というのは目から鱗だ。社会的専制はふつう、生活の隅々にはるかに深く入り込んで魂それ自体を奴隷化する。社会には、社会自体の考え方や慣行に従わない人々に対して、法的刑罰以外の手段によって押しつけようとする傾向がある(18頁)。2020/04/11
かわうそ
33
「私は、行為者本人に関する徳をけっして軽視していない。それは重要性という点で二番目になるとしても、[最も重要な〕社会的な徳と比べれば二番目になる、ということでしかない。」P169行為者本人に関する徳は「(1)長い目で見た時の自分の幸福を尊重する思慮、自分を向上させようとする意欲」P268 社会的な徳は「(2)他人に危害を与えることを自制する徳」のことです。ここが、功利主義のよく誤解される点でありますが、功利主義は個人の幸福を個人を向上させようとする意志を軽視しないし、むしろ、これと両立するのです。2022/10/02