出版社内容情報
幕府、朝廷、各藩の武士たちや民衆の動き、さらに対外的要因なども含め、明治維新をトータルに描く、戦後歴史学における記念碑的著作。維新期を天保の改革から西南戦争までと捉え、絶対主義確立へと至る過程を明快に論じる。(解説=大日方純夫)
内容説明
近代日本の出発点である明治維新を、幕府、朝廷、各藩の武士たちや民衆の動き、さらに対外的要因なども含め、トータルに描く、戦後歴史学における記念碑的著作。維新の始発を天保の改革、その終わりを西南戦争と捉え、民衆の手になる政治的萌芽がつぶされ、絶対主義確立へと至る過程を明快に論じた。
目次
序論(明治維新史の学問的確立の条件;資本主義論争の意義)
第1章 天保期の意義(問題の所在;幕府の改革 ほか)
第2章 尊王攘夷運動の展開(外圧の性格;尊王攘夷論の思想的性格 ほか)
第3章 幕府の倒壊(尊王攘夷運動の挫折・転回;倒幕派の生長 ほか)
第4章 天皇制統一政権の成立(五箇条の誓文・政体書;版籍奉還・廃藩置県 ほか)
第5章 明治維新の終幕
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hiroshi
6
敗戦で明治維新を学問的に研究できるようになった。その6年後に初版が出版された本。その後批判を一部受け入れて本書となった。本文と注が同じくらいあるが、字の大きさから情報量としては注の方が多い。故に分本文はすっきりと簡易だ。著者は史的唯物論に立つ。だから事実を評価する等があり面倒ではあるが、貿易量・米価等への言及もあり政治論より分厚く歴史を語っている。水戸学の儒教から攘夷論は生まれたので、徳川体制維持のために各身分において尊皇をせよという名分論である。だが京都の志士達の間でそれは尊皇攘夷から尊皇倒幕に代わる。2025/03/15
AKa
5
明治維新=絶対主義政権の樹立という講座派の歴史観で描かれている。序論で示される戦前の明治維新史を取り巻く環境や、膨大な注で示される史料、そして井上清を始めとする初版への批判を受けての改訂(なお、この文庫版は初版をベースとしており、改訂内容は同時代ライブラリー版のはしがきに書かれている)などから、これは維新史の概説であると同時に、遠山の考える民主的な歴史学の在り方を示すものでもあったのだろうとも感じる。そして今回の岩波文庫化は、そうした意識もまた歴史の一部となってしまったことを示すものなのかも知れない。2019/07/05
大臣ぐサン
2
本書の初版が出版されたのは1951年。日本が第二次世界大戦の敗戦を経験し、今また朝鮮戦争の勃発により戦争の恐怖が蘇った時期である。戦前の歴史学では国家的な圧力により客観的で科学的な明治維新の研究が行えておらず、戦後の民主化を契機に近代史の研究が必要とされていた。学問の世界も時代や権力とは切り離して純粋な学問的探究のみを行うことの難しさが感じられる。研究者自身も自身が身を置く社会とは無関係ではありえないのだから当然のことだが。本書もマルクス史観の立場をとっているあたり現代から見るとやはり時代性が感じられる。2021/02/23
spanasu
2
明治維新=絶対主義政権の確立とみる講座派の歴史観で描かれており、その結論自体は今となっては評価できないが、天保期から明治維新期までの政治史自体は膨大な注も含めてうまく描かれている。2020/05/03
yasu7777
2
★★★☆☆2018/11/25