出版社内容情報
「サラバンドを学べ、息子よ」──なぜ父は息子に幾何学を学ぶのを禁じるのか。新大陸メキシコで繰り広げられる荘厳で悲劇的な愛の物語。ゴメレス一族の秘密はついに明らかになり、地下空間に下り立った主人公アルフォンソが六十一日目に目にしたものは? ポーランドの鬼才ポトツキによる幻の物語、初めての全訳、完結!(全三冊)
内容説明
「サラバンドを学べ、息子よ」―幾何学の勉強を禁じる父の過去、新大陸メキシコでの荘厳な愛の物語。ゴメレス一族の秘密もついに明かされ、地下空間に下りたアルフォンソは六十一日目に何を見るのか?ポーランドの鬼才ポトツキの幻の長篇、初の全訳、完結!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
100
大幅に改変された後の部分だけあって下巻はカラーが異なる。理性か、信仰かという近代の欧州人が直面した命題を掘り下げる。その中枢を担っているのがベラスケスだ。何もかも演算化する幾何学的分析の切れ味や体系化は読み応え抜群で、結局無限の概念を持ち出して合理主義を皮肉って信仰に着地するが、作者はいずれかの宗教に肩入れしているわけでもない。ストーリーにしても残るのは相対主義の底なしの空洞のようなものだ。作者ははぐらかす様に核心を出さない傾向がある。言辞も構造も異端中の異端だが、設定の精巧さは圧倒的。執筆20年の力作。2025/01/20
KAZOO
94
やっと読み終わりましたが、全体を理解することは難しかったようです。最後に参考としてこの物語の入れ子構造の解説がありました。これを最初にもってきておいてくれればもっとはなしは理解しやすかったと思います。一つ一つの話は面白いのであまり不満はありませんが再度読むときはこの解説と照らし合わせ読もうと思っています。奇書の類に入るのでしょうね。2024/01/10
syaori
70
下巻でも、恋の幻想と現実、知の探求などを新大陸、欧州、アフリカと、世界を股にかけて語る物語から物語へと渡ってゆくその果てに、異教徒への追放令が出る中、イスラーム、ユダヤ、それ以外の宗派やキリスト教徒が暮すシエラ・モレナの山中に、その多様な人々が絡み合うようにして隠してきた主人公の母方の一族の野望と秘密が現われます。それは明かされた途端に消えてしまうのですが、神がどんぐりに「子孫の頭上で日陰を作る森を込め」るように、作者はこの物語に多様な世界の人々が宗派や民族を超えて交じり合う世界を込めたように思いました。2023/03/03
藤月はな(灯れ松明の火)
61
最終巻は宇治十帖宜しくな政治絡みの物語が多し。しかし、今まで物語に出てきた、登場人物たちの関係性が回収されるので脳内アドレナリンも大放出!第41日で全ての登場人物勢揃いは狡いよ!旧約聖書張りの来歴のゴメレス一族、数学で恋愛を証明しようとするペドロに笑いました。ペドロ、真面目に相手にするのが才女、レベッカで良かったね。それにしてもエルビラとトレスの愛の着地点に絶句する事になりました。愛し合う従兄姉の為に一肌脱いで副王と結婚するも女装がバレる事での鞭打ちの刑に怯えるアバドロの心配は一体、何だったんだ・・・。2023/03/28
彩菜
51
小さな木の実の中に将来の森が隠されていたように、無関係に見えた幾つもの身の上語りは重なり絡み、その全体が若者の身の上に関する物語-つまりはゴメレス一族の豊かに繁る家系図へと伸び広がってゆきます。永々と続き続いてゆく枝々、その全てが自分に繋がりまた繋がってゆく事を若者は識るのでした。…結局ゴメレスの秘密も黄金もただ語り得ぬ何かの象徴だったのではないでしょうか、受け継がれ再生され続いて行くそうしたものの。辿り着くとすぐに消えてしまいますが、物語のはじめ道に迷った若者が、この後二度と迷う事はなかったようです2023/08/14